平成2128

ゲームオタク(2

106-106 奥出拓摩

 

ゲームオタクのライフスタイル

一般的に、生活者が最初にゲームに接するのは少年少女時代である。この時期は所属する集団の影響を強く受け、どのようなゲームをプレイするかは流行に左右されやすい。また、情報交換や対戦相手探しの必要上、コミュニティの影響はさらに強くなる。ゲームも他の趣味と同様に、多くの人が一定の年齢に達するといったん「卒業」する。ゲームセンターやおもちゃ店、ゲームショップなどのコミュニティ拠点が減少していることや、ゲーム以外の若年層向け娯楽の増加により、特に近年、ゲームから卒業してしまう傾向が強くなっている。

一方、トレーディングカードゲームが小中学生の間で流行するなど、ゲームは依然として少年少女の心をつかみ続けており、今でもゲームオタク予備軍は多数存在する。今後、ゲームオタク人口が増加するのか減少するのかは、ひとえにこの層をとらえ続けることができるかにかかっている。

 

ゲームオタクの消費の実態

ゲームオタクの消費で特筆すべきは、時間の消費が大きいことである。これは基本的にゲームが経験財であり、最後まで攻略するためにどうしても時間が必要となるからである。家庭用ゲーム機を中心に、ゲームプレイを効率的に行うための攻略本や情報Webサイトの需要が尽きないのもこのためである。さらに、ゲームへの参加そのものにこだわりをもつ「ネットワークゲーム系まったり派」のゲーム時間消費はさらに激しく、本当に24時間ゲームをし続けるオタクも稀ではない。

一方、ゲームオタクの消費でも金額支出が極端に大きいケースが存在する。特に、消費金額がゲームプレイ上、有利に働く場合にその傾向が顕著に現れる。たとえば、アクションゲームにおいては、ハードウェアの性能が自身の成績に直結するため、ゲームオタクは常に最新スペックのPC環境を整えるべく多額を費やしている。一時期、ハイエンドPCの需要はアクションゲームオタクが牽引しているといわれるほどであった。またTCGにおいてもカードをより多く保有することがゲームを有利に進めることにつながるため、多数のカード購入を促進する仕組みが構築されている。

 

拡張余地の提供

ビデオゲームにおいては、ハードウェアの処理能力や表現能力が高まるにつれ、ゲーム内で様々な表現が可能となった。これにより、ユーザーは独自の解釈に基づきゲーム世界を拡張できることになった。現在PCゲームでは、ユーザーが独自にアイテムやマップなどを追加できる機能を備えることも珍しくない。また、このような改造を集め、拡張モジュールとして取りまとめて提供することもおこなわれるようになった。また、ゲームコミュニティの間で広まった独自ルールを、メーカーがオリジナルのゲームに取り込んでしまうというケースも見られる。

ユーザーに独自の拡張を許容するということは、ゲームバランスを崩したり、不正行為を横行させたり、メーカーのビジネスチャンスを奪うというリスクをはらんでいる。しかし、そのリスク異常に得られるものは大きいということが、さまざまな試みを通じて明らかになりつつあり、メーカーもその効果を無視できなくなっている。

 

コミュニティへのゲーム性の付与

ネットワークゲームでは、ゲーム内に共通のミッションがあるため、「敵と一緒に戦った仲間たち」など、実際の利害関係や目的に裏打ちされた強固なコミュニティが形成される。これは、インターネットのチャットや掲示板を中心とした「気が合う」「趣味が合う」という理由で形成されるコミュニティとは大きく異なっている。また、TCGも、単なるカード交換に、「より強いカードの収集」というゲーム性を付与することにより、大きな成功を収めた。

インターネットビジネスを中心に、コミュニティの活用が言われて久しいが、ただ、漫然とBBSやチャットなどの交流の場を用意するだけでは、その活動が活性化せず、活用が進まないケースも散見される。活動を活性化させる手段として、メンバーがお互いに切磋琢磨したり、共通の目的に対する意識共有や達成感を作り出すようなゲーム性を導入したりするのも1つの手段である。

 

 

 

参考文献

野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社