平成21年1月23日
ゲームオタク
106-106 奥出拓摩
ゲームオタクの特徴
ゲームは、余暇活動の1つとして、すでに生活者の中に根付いている。特に10〜30代男性では、テレビゲームの参加率が50%を超えている。また、ビデオゲームへの参加者が若年層中心であることから、ゲームオタクも10〜30代に分布しており、特に20代男性が突出していることが特徴である。
家庭用ゲーム機の草分け的存在である任天堂のファミリーコンピュータの登場が1983年であり、「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などの大作シリーズの登場とともに家庭用ゲームが最初の盛り上がりを見せたのが80年代後半である。
ゲームオタクの特徴は、対象であるゲームの種類によって依存するが、一般にゲームそのものの「攻略」に重きを置くという点で共通している。そして、ゲーム攻略には必ず一定の時間を必要とすることから、ゲームに対する消費時間がオタク性を測る指標となる。「余暇時間のほとんどを(家庭用)ゲームで遊ぶことにあてるか」という質問に対する家庭用ゲーム機ユーザーの回答の割合で、「全くその通り」と答えたゲームオタクは全体の3.9%に達している。
ゲームオタクの分類
・家庭用ゲーム系
家庭用ゲーム機向けに発売されるゲームソフトの収集やゲームプレイおよび攻略を主な活動とする。ビデオゲームの中でも市場が最も大きく、オタク人口も多い。ゲーム自体は10代の参加率が最も高いが、オタクの中心層は20代から30代前半である。
かつては「ゲーム」といえば家庭用ビデオゲームのことをさしていたほど、遊びとして広く浸透しており、情熱を傾ける層も同様に多かった。
しかし、家庭用ゲーム市場の縮小とともに、ヘビープレイヤーの高年齢化が進み、ネットゲームやPCゲームに流れている。また、トレーディングカードゲームブームにより、新たなオタク参入数も減少している。
また、ゲームタイトルの寡占化、大作化、続編化とともに、オタクもスポーツ派、RPG派などのジャンル別に細分化が始まり、それぞれのジャンルに特化する傾向が強まっている。
・PCゲーム系
PCをプラットホームとしているゲームを対象としたオタク。ゲームのジャンルにより「萌え派」「シミュレーション派」「アクション派」などが存在する。
国内のPCゲームは1980年代に盛り上がりを見せるが、家庭用ゲーム機の性能向上に押され一時沈滞。長らく美少女ゲーム中心の市場であった。しかし、近年のPC性能の向上、およびインターネットの浸透により再び盛り上がりを見せている。
オタクにエントリーする時期にどのようなタイトルが盛り上がりを見せていたかにより、オタク派閥が決まる傾向があり、それぞれの派閥の中心年齢層の分布は、流行の変遷にしたがう。
登場する女性の魅力を売り物とするタイプのゲーム(「ギャルゲー」または「美少女ゲーム」と呼ばれる)を特に嗜好し、その収集や評価に情熱を傾けるのが「萌え派」である。「萌え派」は、ゲーム内のキャラクターやビジュアル性、ストーリー性に重きを置いており、ゲームだけでなく、関連グッズやコミック、アニメに対する消費額も大きい。その一方で、ゲーム性にはこだわらない傾向もある。
「シミュレーション派」は、「三国志」「信長の野望」「大戦略」などのシリーズに代表されるシミュレーションゲームに傾倒する派閥である。ゲームのテーマにより、「歴史派」「ミリタリー派」などにさらに分けられる。近年は、アクション要素を取り入れたRTS(Real Time
Strategy)の流行やネットワーク対戦の一般化により、再び盛り上がりを見せている。
「アクション派」は、アクション性の高いゲームに傾倒する派閥である。2000年代に入り、PCの性能向上とともにアメリカから表現力が高いゲームが登場してきたことにより、ヘビープレイヤーが家庭用ゲームから参入してきた。また、ネットを経由して他のプレイヤーと対戦を行えるようになったこともこの派閥が台頭した要因として大きい。ハードウェア性能が自身の成績に直結することから、常に最新スペックを追求するためハードウェアに対する支出が大きいことも特徴である。
PCゲームは外部モジュールという形でゲームに改造を加えることができるケースも多く、このモジュール開発や配布活動でもオタクが活躍している。
・ネットワークゲーム系
ネットワークを経由してプレイするゲームを対象としたオタク。ネットワークゲームの遊び方により派閥も生まれつつあり、現在「まったり派」「アクション派」などが存在する。
特に消費時間が長いことが特徴で、本当に1日24時間ゲームをやっているオタクもめずらしくない。
PCのネット接続の高さから、ネットゲームは今のところPCゲームの中心である。家庭用ゲーム機でも「ファイナルファンタジーⅪ」の登場により一時的にブームが発生したものの、その後ビッグタイトルが続かず、ユーザー数の伸びは止まっている。
「まったり派」は、「冒険をする」「謎を解く」といったゲーム本来の目的を忘れ、ゲーム内の生活をゆっくり楽しむことを目的に切り替えてしまったプレイヤーからなる派閥である。MMORPG(Massively Multiplayer
Online Role Playing Game)のプレイヤーに多く分布している。
これに対し、ネット対戦型アクションゲームのヘビープレイヤーからなる「アクション派」は、ゲーム本来の目的に忠実に、ネット上で日々鍛練を行っている。ネットワーク対戦の普及により、超上級者の神業的ゲームプレイに触れる機会が増加し、アクション派のプレイ技術上達への情熱を高める結果となった。ハードウェアの性能が成績に直結するため、常に最新スペックのPC環境を整えるべく、ハードウェアに対する支出額も大きい。アメリカや韓国ではこのようなゲームのプロリーグも存在し、多くのハードウェアメーカーがスポンサーとなっている。
・アーケードゲーム系
ゲームセンターやゲームコーナーに設置されている業務用ゲーム機を対象として、ゲーム技術を磨くことに情熱をかけるそうである。「スペースインベーダー」に端を発し「ゼビウス」「グラディウス」に代表される80年代のシューティングゲームブームとともに登場し、90年代前半の対戦格闘ゲームブーム時にその最盛期を迎える。
かつては、ゲーム機に100円玉を高く積み上げ、クリアするまでゲームから離れないオタクも多かったが、家庭用ゲーム機に登場とともにその姿は見られなくなった。また、かつてアーケードゲームはゲーム技術の最先端を走っていたが、家庭用ゲーム機やPCの性能向上により、徐々にその勢いを失っており、それに伴いヘビープレイヤーの流出が続いた。
アーケードゲーム系は、ゲームセンターやゲームコーナーを中心に、つながりは緩いながらもコミュニティを形成し、情報交換や対戦試合を行っていることが特徴である。天才的なゲームプレイでギャラリーを魅了するオタクは現在でも細々と存在する。
90年代後半の音ゲーブーム以降、アーケードゲームは徐々に勢いを失っていたが、近年では、カードゲームの要素を取り入れたタイプのゲームが投入され、再びプレイヤーを集めつつある。
・カードゲーム・ボードゲーム系
カードゲームやボードゲームに情熱を傾ける層である。ゲームの種類は多岐にわたるが、目立つ派閥としてボードゲーム系には「シミュレーションゲーム派」「テーブルトークRPG派」、カードゲーム系には「トレーディングカードゲーム派」が存在する。
オタク人口自体はビデオゲームに比べ少ないものの、比較的コミュニティの形成がさかんであることが特徴である。またコレクションへの情熱が特に大きい。テーブルトークRPG(以下、TRPG)ブームやトレーディングカードゲームブームなどを経て、根強くファンを集めているものの、オタク人口は減少の一途である。
「シミュレーションゲーム派」は、ビデオゲーム登場以前のシミュレーションゲームに傾倒する、古参ゲームオタク派閥の1つである。これらは軍事作戦や歴史上の戦いを題材としたものが主流で、本格的なものになると膨大な数の駒と大きなボードを用いてプレイする。シミュレーションゲームは実際のプレイには非常に手間と時間がかかるため、シミュレーションゲーム派は、プレイはしないもののとりあえず発売されたゲームを集めておくというコレクション指向に陥りがちである。
「TRPG派」は、80年代後半のブーム以降、PCゲームにファンを奪われ、人口は減少の一途をたどっていた。一部は、ネットワークRPGゲームに、別の一部はトレーディングカードゲームに戦いの場を移したが、コアファンは根強く活動を続けている。
カードゲームでは、「マジック・ザ・ギャザリング(以下、M:tG)」の成功に端を発するトレーディングカードゲーム(以下、TCG)ブームによる「TCG派」の誕生が注目を集めている。ファンタジー世界を題材とする「M:tG」を草分けとし、アニメ、コミックのキャラクターを題材とした「ポケモンカードゲーム」「遊戯王」やアーケードゲームとの融合で成功した「ムシキング」など、次々とヒット作が現れ、幅広い年代を取り込むことに成功した。
参考文献
野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社