平成20年12月19日
産業とアニメオタクとの関係
アニメプロダクションの収益を支える顧客基盤としての位置づけ
アニメオタクはアニメ産業にとって重要な顧客基盤である。アニメ産業の中でも、特にアニメプロダクションの収益基盤になっている。
テレビ局からの元請けとなるようなアニメプロダクションは、TVアニメ制作自体では収益にならない。このようなアニメプロダクションは、TVアニメ作品から派生した2次収入を得ることによって、収益を確保している。たとえば、DVDソフトの販売やキャラクター商品からのロイヤリティ収入などである。
アニメオタクは、これらの商品、特に2次収益の中心となるDVDソフトやキャラクター商品の最大の購買層となっており、安定的な顧客ユーザーとして、これらの収益の下支えとなっている。
オタク向けビジネスの先行事例となっている
アニメオタク向けのビジネスを見てみると、DVDソフトのセット販売であるDVD-Boxの販売、期間限定や数量限定といった限定商品販売、トレーディングカードやカードゲームといった商品など、オタク向けの消費財に関して、ありとあらゆるビジネスが生まれている。たとえば、キャラクターが印刷されている等身大の抱き枕、声優とのイベント旅行、果てはファンド商品まで存在する。アニメ関連のビジネスは、まさにコンテンツビジネスの先行事例であり、実験場の様相を呈している。
深夜アニメとアニラジ
アニメビジネスのメディア露出で、アニメオタクを意識した「商品」が深夜アニメである。近年、深夜の時間帯にアニメが放送されるケースが非常に増えている。その理由としては、ポケモン事件の影響や、深夜は視聴者の年齢が高く映像表現が比較的自由である点があげられる。しかし、アニメオタクが高年齢層にまで広がっており、高年齢層向けのアニメの需要が潜在的にあったということがもっとも重要な要因であろう。また深夜は放送局へ支払う電波料が安く、その分、低コストでも番組が作れるということもあり、テレビ局やアニメプロダクションが実験的な作品、あるいはDVD販売のためのプロモーション的作品などを投入している。
一方、アニメラジオもオタクの需要を抜きにしては考えられないメディア商品である。これもアニメやコミックのサイドストーリーを音声劇にしたサウンド小説のようなCD商品が売れていたことから、受け入れられたと思われる。ただ、これも基本的には、声優の独自のトークや制作過程での裏話などを、映像がなくても聞きたいと強く求めるオタクのニーズが潜在的にあったことが、もっとも重要な要因であろう。
最近では、ラジオ本家のアニラジよりも、インターネット配信や携帯電話向けコンテンツとしてのアニラジが人気である。地域が限定されるラジオ放送から、全国で聴取できるメディアに移行しているのも、アニメオタクが全国的に展開している表れだと考えられる。
参考文献
野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社