平成20125

アニメオタク

106-106 奥出拓摩

 

アニメオタクの特徴

アニメオタクは10代から40代まで幅広い年齢層に分布しており、男女別では男性の方が多い。

日本では、誰しも幼少期にアニメに夢中になる。しかし、アニメ鑑賞が「通過儀礼」として終わらずに、年齢を重ねても持続的に行われるようになり、オタク化が進展する。つまり中学生、高校生ぐらいからオタク化が始まる。

アニメオタクは知識欲、収集欲が強い。また、ハードディスクレコーダーやPCを駆使してTVアニメの録画・編集を行い、またこれらのファイルを、フォーマット変換・圧縮し、P2Pツールを使ってファイル交換するなど、PCIT上のリテラシーも相対的に高い。

 

・世代を超えるアニメオタク

・女性オタク

・隠れオタクとカミングアウト

 

アニメオタクの分類

・鑑賞系

このタイプがアニメオタクの基本型である。TVアニメやアニメ映画、OVAなど、アニメ作品の鑑賞や録画に注力するタイプである。アニメの場合、最近はマンガや小説を原作としたものが主流であり、メディアミックス展開としてゲームソフトが発売されることも多い。アニメオタクは、このようなマンガ、小説、ゲームといった周辺コンテンツにも興味を持っている。また、アニメ雑誌にも目を通している。

どんなジャンルも見るオールラウンダーもいれば、いわゆる萌系の中心である美少女系を好むタイプ、SF・メカ系の作品を好むタイプ、少年系を好むタイプなど、さまざまに分かれている。

 

・知識・評論系

鑑賞行為のレベルが高まって、アニメ作品を作り手側から分析したり、作品の世界観といった視点からとらえ直したりして、その作品に対する造詣を深めようとするタイプである。このような行為の中で得た見識を、同行の士と議論することによって、造詣をより深めようとする傾向がある。

たとえば、テレビアニメの場合、制作スタッフが分業体制になっており、作品が1クールの作品であってもスタッフがいくつかに分かれて作業を分担していることが多い。そのため、1つの作品の中でも、各話によって演出や作画のテイストが少しずつ違ってくる場合がある。そこで、各話のエンディングから、作画監督、演出、脚本といった毎回の主要スタッフ、作画や動画のスタッフをチェックし、これらのスタッフの編成から、演出や作画の特徴を分析する。さらに、その分析結果について、他のオタクと議論をして、自分の分析を評価しようとしたりする。また、監督や演出家の傾向を独自に分析して、作品の今後の方向性を想像するといったこともしている。

またアニメは、その舞台となる社会や時代などの設定、登場するキャラクター、登場する武器やメカなど、すべてのものに設定がある。しかも、原作として書籍やコミック、ゲームなどがある場合には、原作の情報や原作にはなかった新たな情報など、知りたい情報が存在している。もちろん、監督や演出、脚本といったスタッフのインタビュー記事も知りたい情報となる。そして、知識・評論系はこれらの情報の収集意欲が旺盛である。このように、アニメの場合は、ある作品を理解しようと思うと、そのために必要な情報がたくさん存在する。また、その情報を自分なりに解釈すると、その解釈が良いか悪いか意見を求めたくなり、同好の士と議論するようになる。このようなプロセスの中で、アニメファンは、徐々に知識・評論系の側面を身につけていく。

これら知識・評論を表現する方法として、ネットでのホームページや掲示板、ブログなどの他に、同人誌を発行している場合もある。

 

・声優系

アニメ作品だけでなく、声優に対して好意を抱き、オタク度を高めていく人。声優の声とそのアニメキャラクターの声が特にマッチしていたり、声優の声そのものが好きだったり理由は様々だが、特定の声優に強くあこがれるタイプである。

あるアニメ作品が好きで、作品中のキャラクターが好きになり、その声を担当している声優に興味を持ち、その声優自身を好きになってしまうというのが、声優系になる基本的なパターンである。この他にも、声優がアニメの主題歌を歌っていて、それがきっかけになる場合もある。アニメ作品以外にも、声優が出演しているラジオ番組を聴いたり、イベントやコンサートにも積極的に参加したりする。また、声優専門雑誌を購読したりする。この意味では、声優オタクは、新人系・マイナー系の芸能人を対象とする芸能人オタクとかなり行動パターンや考え方が似ている。

声優のイベントは、DVDなどの発売記念の場合は、秋葉原の大手電器量販店のイベント会場や、少し大きな規模になると各地の公会堂などを使って行われる。コンサートも大きなものになると日本武道館や中野サンプラザで行われることもある。

ファンクラブへの加入もオタクの基本動作の1つであるが、好きになった声優のファンクラブがあれば加入するが、正式なファンクラブがなければ、自分で私設ファンクラブを作って、同士を集めながら活動を深めていくということもある。ただ、声優オタクは誰か1人だけを好きになるというよりは、他の声優もそれなりに好きという場合が多い。

アニメは2次元(2D)、声優はリアルの3次元(3D)であり、声優系はその中間という意味から[2.5D]のオタクといわれることもある。

 

・アニソン系

TVアニメの特徴の1つであるオープニング(OP)、エンディング(ED)に流れる歌(アニメソング。略してアニソン)に興味を抱いて、自分でアニソン集を作ったり、OPEDだけで映像集を作ったりする人。これらのOPEDをどれだけ知っているかが1つのステータスである。さらには挿入歌にも興味が拡大する。

またアニソン系は、アニソンを歌うことも大好きであるため、オフ会はカラオケ店に行くことが多い。

ちなみに、TVアニメの場合、放送期間が1クール(テレビ番組の放送期間の単位のこと。1クール=3ヵ月)を越えると、1クールごとにOPEDの楽曲が変更されることが多いため、1つのアニメ番組であっても複数のOPEDが存在し、その結果、アニソンの曲数は非常に多くなる。そこで、アニソン系は、カラオケ店を選択する際にもアニソンの曲数が多いところを探す。

また、アニソン系には、市販の通信カラオケの楽曲では物足りず、配信されてない楽曲データを収納したPCをカラオケ機器に接続して、カラオケを通して演奏させて、その楽曲をカラオケ的に楽しむ層もいる。さらに市民会館などの会議場や小ホールを借り切って、OPEDの映像集を上映しながら、参加者全員で合唱するといったオフ会イベントも実施している。このような会は歌会と呼ばれている。

 

・創作系

まず、好きな作品に関して、その世界観の間隙などを自分で創作して楽しむタイプである。世界観の間隙の創作とは、たとえば、アニメの物語が本筋の話だとすると、本筋とは関係ない登場人物たちのサイドストーリーを作ったり、本筋の展開の中で、時間的な経過がある部分があれば、これを埋めるような話を作ったりすることである。

このタイプは小説や漫画という表現形態で創作していることが多い。これらの小説や漫画は、ネットや同人誌の即売会で発表されている。

このような創作系のうち、同人誌を制作している層はコミックオタクの一派である同人誌系と重複度合いが大きいと考えられる。

一方、アニメオタクのレベルが高くなると、小説や漫画ではなく、アニメの制作へ志向していく創作系も登場する。ただし、アニメ制作を行うオタクは同人誌制作を行うオタクよりも少ない。というのも、アニメ制作は同人誌制作よりもはるかに困難だからである。

自主制作のアニメが商業作品化された、あるいは自主制作のアニメクリエーターが作った商業作品で人気が高いのが「ほしのこえ」である。監督の新海誠氏は、このようなアニメ制作を行う創作系が拡大している中で、その代表例・成功例と言える。

この創作系は、制作した作品を、文化祭や学園祭、サークルや有志の上映会、フィルムイベントやコンテスト、個人のホームページなどで上映して、アニメ創作の意欲を満たしている。

 

・コスプレ系

アニメオタクにもコスプレ系が存在する。もともとは創作系の同人活動の一部として登場したが、現在は、同人活動とは無縁のまま、純粋に衣装を着ることを楽しむコスプレイヤーが多い。

さらに、コスプレイヤーになってから、他の人がやっているキャラクターに興味を持ち、その作品のファンになっていくという、従来とは逆の方向でアニメオタクになるというパターンもみられる。

現在、イベントはコミケをはじめ、小規模のものまで入れると、たとえば関東圏では月1回以上、多い月では毎週1回どこかで開催されている。

 

 

 

参考文献

野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社