平成201121

コミックオタク(3

 

コミケとともに始まるコミックオタクの歴史

コミックへのこだわりが、コミックの収集だけでなく評論や同人誌の制作といった活動に現れるようになり、オタクの存在が顕著になる時期を1970年代に見ることができる。その象徴的な出来事として、1975年の第1回コミックマーケットの開催があげられる。当時まだめずらしかった同人誌即売会を単独のイベントとして独立させ、コミック同人の交流の場を幅広く提供するということが当初の趣旨であった。その後、コミックマーケットは、「うる星やつら」「キャプテン翼」「美少女戦士セーラームーン」など数々のブームを経て急激に成長した。コミックマーケットの略称「コミケ」は、もはや同種の同人誌即売会を指す言葉として定着している。

 

エヴァンゲリオンというターニングポイント

オタク活動がもっともさかんに行われ、社会的にも認知されたのは「エヴァンゲリオン」時代だった。ロボットという系譜、少女という系譜、内向的な主人公の成長という要素がそろったこの作品は、オタクの大きな支持を得て一大ブームを起こすとともに、その活動の盛り上がりにより増大したオタクの存在を社会的に認知させることになった。オタクは、近寄ってはならない存在から隣の変人として受け入れられるきっかけを得た。一方、ビジネスとしても期待以上の成績を上げた本作品は、増大したオタクをビジネスのターゲットとして意識させることにもなった。

これはオタクにとって大きなターニングポイントとなった。

それまでオタクの派閥は、少年/少女、少年/青年/成人、一般/同人といった作品ジャンルごとに分かれていた。しかし、こだわりの対象が抽象的要素へとシフトしたことから、この分類は形骸化し、新たなオタク派閥が誕生した。この新たなオタク派閥は、こだわり対象の抽象度の高さゆえに、さまざまなジャンルのファンをひきつけ、ブーム以後に参入したオタクの受け皿となった。そして、この派閥は一大勢力となり、コミックマーケットが巨大化するきっかけとなった。

 

 

 

参考文献

野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社