平成20725

オタクマーケティング論(4

 

コミュニティ(Community

オタクは必ずしも単独で活動するわけではなく、同じ対象に関心を寄せるオタク同士でコミュニティを形成する傾向がある。

オタクは、マスチャネルから入手できる情報よりもさらに高度で限定された専門的情報を必要とするが、コミュニティに身を置くことなく専門的情報を得るのはきわめて難しい。また、対象に関する知識を十分に持っていなければ、自らのコレクションや創造物への情熱を理解することはできないとするオタク特有の考えも、コミュニティ形成の一因となっている。

こうして形成されたコミュニティのメンバー間には強い仲間意識が生まれ、情報共有や合作など、きわめて協調的な行動が見受けられる。その一方で、知識量や技術力、収集数などをめぐって競争意識が働き、ある種のヒエラルキーが構成されることも事実である。

コミュニティ内での競争意識が、さらに多くの知識や技術の獲得、コレクション増加への原動力となるため、コミュニティ全体のレベルを向上させるというメカニズムが成立する。これがコミュニティメンバーの更なるオタク化の要因となっている。

オタクコミュニティにおけるヒエラルキーは明示的なものではなく、客観指標も存在しない。きわめて流動的である上に、評価軸によって序列が入れ替わる多面的なヒエラルキーであるため、コミュニティ内で情報発信を活発に行う人ほど高い評価を得る傾向にある。

オタクとコミュニティの関係においてインターネットが果たした役割は大きい。旧来より趣味のサークルなどのコミュニティは存在していたが、通信手段は電話か郵送に限られ、加入する際には地理的条件などに制約を受けることが多かった。しかしインターネットによって地理的・時間的制約が取り除かれ、比較的めずらしい趣味であっても国内や世界中から同好の士が集まってコミュニティを形成することが可能となった。また、地域を越えて高いレベルのものが集まることが可能になり、切磋琢磨することで個人のレベルも向上した。

情報交換による趣味の精鋭化、オタク化の推進を実現するという点でコミュニティが果たしている役割は大きい。

 

 

 

参考文献

野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社