平成20年7月18日
オタクマーケティング論(3)
創造(Creativity)
オタク市場では、対象となる製品が未完成な状態にあるものや、創造の余地が残されているものが好まれる傾向にある。たとえばクルマオタクに支持されるのは必ずしも輸送機器として優れた燃費のよい実用車とは限らず、むしろどこか遊び心の残った自動車であることからもそれはうかがえる。つまりオタクは対象の創造過程の一端に加わり、自らがオリジナリティを発揮する機会を得られることに強い魅力を感じるのである。これは一般消費者との大きな違いである。一般消費者にとっては当然ながら完成状態に近い製品の方が望ましいからだ。
特にアニメのキャラクターなど架空の存在や、改良において自由度の高いPC製品については、オタクが盛んに手を加えようとするケースが多く見られる。アニメのキャラクターや世界観をもとにした2次創作や、PCのパーツ交換がこれに相当する。
また、単価が高く、比較的収集が少なくなりがちなカテゴリーにおいては、自らが手がけたアイテムに対し強い愛着が生まれ、対象を擬人化して名前を行けるケースさえ見受けられる。これは自作PCや車などにおいて頻繁に見られる。
上記のことから、市場で展開する製品に消費者が創造性を発揮する余地を残すことは、オタクをターゲットとする場合に重要なポイントになると考えられる。また、創造過程においては情報の収集・交換が必要となり、また完成した際には作品を披露する場を持ちたいとの欲求も生まれることから、創造性は「コミュニティ」形成の1つの欲求力ともなっている。
参考文献
野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社