平成20年7月11日
オタクマーケティング論(2)
新マーケティングフレーム「3C」
オタク特有の情熱や消費性向を踏まえた新たなマーケティングフレームとして「収集(Collection)」「創造(Creativity)」「コミュニティ(Community)」の「3C」を新たに加える。
収集(Collection)
オタク消費者に共通する行動の1つに「収集」がある。これは本人が強い興味を持った対象、あるいはその関連アイテムを可能な限り購入して収集する行動を指す。有名なものにはオタク分野として歴史の長い切手収集があげられるが、コミックやアニメの書籍やDVDパッケージ、キャラクターグッズなどの収集もイメージしやすいだろう。
可処分所得のほとんどを収集につぎこむオタクも存在する。市場に出回っている絶対数が少ない「レア物」は、元値にかかわらず数万から数十万円で取引される場合もある。
収集において1つの理想とされるのはコンプリート(完全収集)である。基本的にはよりたくさん収集するほど、より理想像に近づくと考えられる。しかし、たいていの場合は対象となるアイテムが多く、コンプリートするには個人の資金力や時間の限界が存在する。そのため条件を絞り込み、課題を縮小することによってコンプリートを達成可能な範囲に持ち込むことが必要となる。多くの場合は、達成可能となった課題をコンプリートした後に対象を他に切り替えて新たに収集に取り掛かるという行動が見られる。1990年代に大ヒットしたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」関連の収集を例に取ると、「新世紀エヴァンゲリオン」の関連商品は多数存在するが、主要登場人物の「綾波レイ」の関連商品となると対象は数分の1に減少する。まずは「綾波レイ」のコンプリートを果たし、さらに収集を極める場合は他の登場人物にとりかかるのである。
収集において評価軸となるのは対象の数だけではない。質も重要な評価軸となる。対象の数が膨大である場合などは質により絞込みを行い、優良な対象のみを収集するオタクも存在する。
また、課題は簡単に達成できるものがよいとは限らない。収集の困難さがコンプリート達成時の喜びを増幅させるからである。そこで困難な目標を設定するあまり、趣味であるはずの収集過程がやや苦痛に感じられるという本末転倒な状態もしばしば見られる。オタク用語ではこの苦痛を伴う収集課程を「修行」と称し、自らを揶揄して用いる。
多くの場合、投入した資金や収集したアイテム数が多くなるほど対象への愛着は強くなり、収集を打ち切り難くなる。市場で展開する製品に収集性を持たせることは、顧客あたりの「Life Time Value(生涯価値)」を上げるためにも重要となる。
参考文献
野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社