平成2074

オタクマーケティング論(1)

 

オタク登場以前のマーケティング

マーケティングフレームは数多く存在するが、著名なものの1つに、1961年にアメリカのマーケティング学者、ジェローム・マッカーシーが提唱した「マーケティングの4P」があげられる。

4Pとは製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の頭文字をとったもので、これら4つの側面から市場を捉えることにより、論理的にマーケティング戦略を構築できるといわれている。

製品には優秀さ、価格には(同じ条件ならば)安さが求められる。プロモーションは大衆に広く認知されるものが望ましく、どこでも手に入る行き届いた流通であるが望ましい。これでマーケティング戦略の方向性が見えてくる。特に日用品などの消費財については4Pの側面からのアプローチが適用されやすい。

もちろんこれはあくまで戦略を立案する上で参考にすべきマーケティングフレームの1つであり、現代の市場において価格は必ずしも安ければよいとは限らない。市場の高度化に従い、限定商品の販売などあえて入手を困難にすることによって逆に購買意欲を煽るなど複雑な戦略が要求される場合もある。贅沢品など嗜好性が強くなるほど複雑な戦略が要求され、後に4Pに物的証拠(Physical evidence)、プロセス(Process)、人(People)を加えたマーケティングフレーム「7P」も登場している。

 

対オタクマーケティング

オタク市場では、フィギュアやロボットなどオタクに愛好される製品市場を4Pの側面から分析すると次のようになる。

  製品(Product):外部からはその魅力が理解しがたい

  価格(Price):価格は度外視

  プロモーション(Promotion):周知されているものでは魅力が半減

  流通:(Place)入手が難しいほど手にできたときの喜びが大きい

 

4Pの側面で確認してみると、オタク市場は日用品などの消費財市場とは対極をなす市場であることが明らかとなる。極端に嗜好性の高いオタク市場に対して戦略を構築するには、オタク特有の情熱や消費性向を踏まえたマーケティングフレームを利用することが必要となる。

 

 

 

参考文献

野村総合研究所オタク市場予測チーム(2005)『オタク市場の研究』東洋経済新報社