方 谷 革 命 C
〜山田方谷とケインズ革命〜
22年10月8日
守屋秀之
◎時代背景〜江戸編〜
・江戸時代の経済の基礎は、もともと自給自足の自然経済を営む事が前提の米本位経済にある。農民から職人や商人になることが自由だったように、武士から農民や商人になることも自由だったのは江戸時代以前のことだった。一農民から太閤にまだなった豊臣秀吉の出世物語はあまりにも有名な話である。だが、1600年を境目として職業移転の自由は失われた。徳川家康が天下を制すると同時に、士農工商の序列を定めて、人民をがっちり身分制度に縛り付けてしまったからである。支配階級である武士を最上級に位置づけ、被支配階級の民を農工商とした。特に農民には土地を離れることを許さなかった。
江戸時代になって商業はますます発展した。当然、貨幣経済が旺盛になる。伝統の米本位経済は圧倒的な金本位経済に翻弄された。このことは米本位経済を基盤とする支配階級である武士の力の衰弱と、かわってカネを握り経済力を持った商人の台頭を意味した。
8代将軍徳川吉宗のブレーンの一人だった荻生徂徠は「商人主となりて、武士は客なり」とその主客転倒ぶりを嘆いていることから、この勢力逆転は、すでに18世紀の8代将軍吉宗の頃には明白な事実になっていたことがわかる。
日本の武士道は銭勘定と算盤を徹底して軽蔑するように教えてきた。この世で唯一肥え太り続ける商人たちを野放しにしたまま、経済オンチの武士たちは、ひたすら農民に苛酷極まりない年貢の取立てを強要した。四公六民は五公五民となり、やがて六公四民の枠さえ超えていくことになった。
参考文献
野島 透『山田方谷に学ぶ財政改革』(2002)明徳出版社
矢吹邦彦『ケインズに先駆けた日本人―山田方谷外伝−』(1998)明徳出版社
小野晋也『山田方谷の思想』(2006)中経出版