平成20年6月13日
テレビゲームのメリット
105-370
中川 正隆
1.
教育面
テレビゲームには、教員の単純な教示や指導を繰り返さずに習熟度に応じた課題設定や学習教材の現実的な提示が可能なCAIのメリットと、児童・生徒を引きつけ、学習への動機づけを高めるメリットがある。
教育用テレビゲームを使った研究は、国内外で少なからず行われていて、米国のフェング・ディンとジョセフィーヌ・カラオは幼稚園児に毎日40分、11週間にわたってライトスパン社の教育用テレビゲームをさせる実験をし、スペリングなどについて明らかな向上がみられた。また、13〜14歳の中学生を対象とした歴史学習に『MediEvil2[1]』というというテレビゲームを用いた実験もある。
実験方法………『MediEvil2』というテレビゲームを使って学んだ場合と印刷物に書かれた同じ情報量のテキストで学んだ場合と比較する。
実験結果………印刷物で学んだ場合は50%程度
テレビゲームで学んだ場合は75%以上
日本では、八幡私立男山東中学校で2006年9月から5ヶ月間、3年生を対象に試験的に「ニンテンドーDS」を英語学習に取り入れた。その結果、語彙数が平均で360〜420語増え、英検3級レベルの生徒が19%から79%に増えた。
スポーツ教育では、フィンランド・オリンピックスポーツ研究所のミンナ・ブロンクヴィストらのスポーツ分野の戦術習得に有効であるか調べる実験で、スポーツ教育にも応用できることがわかった。
2.
認知機能・身体機能の回復
海外では、米国を中心にリハビリテーションや高齢者の認知・身体機能を維持するためにテレビゲームを利用しようとする試みが進んでいる。リハビリテーションの領域では、脳に外傷を受けた患者が、知覚や注意などの認知機能を回復するためにテレビゲームを用いた場合の効果が報告されている。また、腕を伸ばすなどの身体機能の回復やAD、ADHDの治療に用いられるケースもある。
3.
心理臨床分野
テレビゲームは、対人恐怖を取り除くクッションになるため、不登校で児童相談所や教育相談所などを訪れる子供の有効なカウンセリングをする手助けになる。しかし、テレビゲームの効果が効果的すぎるため、相談員がテレビゲームに頼りすぎ、相談技量が落ちてしまうという懸念があり、むしろそれに頼らないようにすることを推奨するケースさえある。
また、ガンや白血病の治療を受けている子供の病気に対する不安を取り除き、苦痛であるはずの治療に前向きに取り組む動機づけになるという報告がある。他にも脅迫的で自己破壊的な行為の解消に成果を上げたケースがある。
4.
まとめ
教育、リハビリ、病気治療などは、効果を出すには当事者の継続的な努力が必要になる。しかし、これらは楽しいこととはいえないため、長続きしにくい。しかし、テレビゲームが介在することで、これらのことが楽しんでできるようになり、長続きするようになるため、いい効果が生まれる場合がある。
参考文献
坂元章(2004)『テレビゲームと子どもの心』メタモル出版
参考URL
ニンテンドーDSで英語学習。語彙力アップ:教育ニュース
http://www.incube.jp/seisekiup/85/ds.html