平成19年6月29日
日本とアメリカでのRPGの人気の違い
105-370 中川正隆
1.人気の違い
日本でのRPGの人気は高く、ゲーム市場の中核を担っています。一方、アメリカでは中核を担っているのは、アクションゲームやスポーツゲームです。また、アメリカで販売されているRPGのほとんどが日本製のソフトを翻訳・移植したものです。さらに、日本の人気RPGでも市場から撤退するくらいアメリカではRPGの人気は低いです。
2.人気が違う原因
日本とアメリカの人気の違う原因は以下の通りです。
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識字率
RPGでは大量の文字を読むことになります。しかし、アメリカの成人のうち約2300万人は日常の読み書き・理解に関する最も簡単なテストでさえ、機能的に識字することができません。そのため、RPGはアメリカでは享受できる層に制限ができてしまいます。一方、日本では識字率はほぼ100%で、日本語のテキストを日本人の多くが消化できるレベルまで引き下げています。そのため、ほとんどの日本人はRPGを楽しむことができます。
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教育
日本の教育は、課題を指示されたら、興味や関心に関係なく熱心に取り組むことが美徳であるという教育をし、アメリカでは自分の興味に敏感であることが優先され、自由で独創的な発想が賞賛されるような教育をします。その結果、日本人の子供はアメリカ人の子供に比べて忍耐力と忠実さが高くなります。その忍耐力と忠実さがRPGをプレイするためには重要になってきます。
RPGはクリアするだけでも数十時間かかります。物語を進めるためには、単調な戦闘を何度も繰り返さなければなりません。また、日本のRPGは自分が希望する役割を演じるのではなく、ゲームの製作者が要求する役に徹し、物語中の指示に従って行動するゲームです。この2つから、RPGを楽しむには忍耐力と忠実さが必要になってきます。これが、日本とアメリカでRPGの人気が違う原因になります。
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マンガ
日本とアメリカでは、マンガの表現方法に違いがあります。日本のマンガは幼児性を強調し、アメリカのマンガは写実的で迫力があります。また、RPGのデザインを漫画家が手がけることが多いです。その結果、RPGの画像は日本のマンガのように幼児性を強調したものになります。写実的で迫力のある絵に親しんできたアメリカ人には、それを円滑に受け入れることができません。日本とアメリカの表現方法の違いが、アメリカ人にRPGが受け入れるための障害になります。
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宗教
RPGにドラゴンがよく出てきます。このドラゴンの日本とアメリカでの考え方の違いが日本とアメリカでのRPGの人気の違いの原因に関わってきます。日本では、邪悪な存在だけでなく神としても描かれ、アメリカでは退治されるべき邪悪な存在としてのみ登場します。
また、生死観の差異も原因となっています。日本とアメリカも連続性や永遠をテーマにしていますが、日本は円環型、アメリカは直線型という違いがあります。これもアメリカ人がRPGを受け入れるための障害となっています。
これらの問題は、将来解決される可能性があります。その例として以下があげられます。
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日本ではアメリカ的教育方針に傾きかけ、アメリカでは日本的教育方針に関心を示し始め、日本とアメリカの教育の方針・目標の差異が縮小の方向に進んでいる
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日本のマンガやアニメが世界的に人気がある
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幸福のドラゴンが登場する『ネバーエンディング・ストーリー』、ドラゴンと次第に心を通わせるようになる青年を描いた『ドラゴンハート』がアメリカでヒットした
参考文献
八尋茂樹(2005)『テレビゲーム解説論序説』現代書簡