平成20年1月11日
104-529 吉田純美
全家連の破産について
◎全家連 解散へ
精神障害者の家族会の全国的な取りまとめ組織である全家連(全国精神障害者家族会連合会)が破産したのは2007年4月のこと。型授産施設(ハートピアきつれ川@栃木県)建設のための巨額の借り入れに加え、国などから受けた補助金の流用が2002年に発覚し、その返還を求められたことから、約10億8000万円の負債を抱え、運営が立ち行かなくなったことによる。
精神障害者と家族を支える中核となる組織である全家連がなぜ解散!?と思うが、その裏にはなんと厚生省との癒着という問題があったようだ。
「きょうされん」のHPより 抜粋
■全家連問題の経緯
表向きは、旧厚生省が端緒を開いたことになっている。1990年代の最初の頃に、旧厚生省より全家連に対してこんな構想が持ちかけられている。「温泉地で保養所をつくれないか」というものだった。これを受ける形で、全家連は「ハートピアきつれ川構想」を打ち上げた(授産施設制度を活用しての保養所)。多額の借入金を主財源としながら、形のうえでは必要額の20億円余を揃えたのである。しかし、年間4,000万円にも及ぶ返済計画は(しかも20年間続くことになる)、余りに無謀だった。実際に、事業開始直後にして、既に赤信号がともっていたのである。独立採算的な事業をねらった「ハートピアきつれ川」であったが、返済に窮するとなれば、その母体である全家連に影響が及ぶのは必然である。苦しまぎれに打った手が、全家連に交付されていた各種補助金(厚労省による補助金が最も多かった)を返済金に充てようというものだった。禁じ手を放ったのである。このことが報道機関に漏れるところとなり、「補助金目的外流用事件」として新聞沙汰となった(最初の新聞報道は2002年11月、読売新聞)。 中略
■ひねり出された「偽装解散」の道
つまり、補助金不正流用分の返済金に加えて、これに「ハートピアきつれ川」の残債を合わせ、借金のすべてを全家連に集結し、その上で借金で膨らんだ全家連を破産させるという筋書きである。妙案づくりで勘案しなければならなかったのが、1.「ハートピアきつれ川」を継続させなければならないこと(多額の国費が投じられているのであり、継続させることは厚労省の至上課題)、2.全国の家族会をつなぐ中央組織体を残さなければならないこと、3.全家連の財産をできる限り残すこととされている。
さすがに破産の申し立てともなれば、3の財産をつなぎ止めておくことは叶わなかった。財団法人全家連の最大の財産である、「全家連ビル」(東京都台東区、地上7階地下1階)は手放さなければならなくなったのである。国を中心とした債権者に譲渡されるのだろう。残る二つのポイントがどうなるのかということであったが、「ハートピアきつれ川」については全家連と切り離した上で、全国精神障害者社会復帰施設協会が受け皿となった。全国をつなぐ中央組織体については、全家連を解散した上で、「NPO法人全国精神保健福祉会連合会」として新たな組織体に生まれ変わることになった。既に、昨年末に東京都より認証が下りているというのだから、なかなかの手回しである。
あらためてまとめると、財産は没収されるものの莫大な借金はチャラになり、その上で、「ハートピアきつれ川」を継続し、中央組織体についても再スタートを切るというのである。
※「きょされん」とは?
「きょうされん」とは共同作業所全国連絡会のことである。
1977年に障害のある人たちのニーズをもとに、16ヵ所の共同作業所によって結成された。「政策提言や関係団体と連携しながら要望活動を繰り返し、授産施設の分場制度や相互利用 制度、社会福祉法人の要件緩和や小規模通所授産施設制度の創設などの実現へ努力」してきた組織である。
※全精社協とは?
現在、ハートピアきつれ川は、全精社協によって運営されている。
全精社協とは、社会福祉法人 全国精神障害者社会復帰施設協会のことである。全精社協は、「精神障害者の社会的入院の解消、社会復帰・社会参加と生活を支援する活動の推進等を通じて、精神障害者の人権や適切な医療受給権及び生活権を守るための施設運営が行われるよう努力」している組織である。結成は1990年10月10日、法人として認可を得たのは1994年12月と比較的新しい組織。
参考URL
全精社協(http://www.zenseishakyo.or.jp/index.html)
きょうされん(http://www.kyosaren.or.jp/)
YOMIURIONLINE(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20070417ik09.htm)