あなたが抗うつ薬をもらったら?

〜抗うつ薬の変遷〜B

 

☆SSRI=「ハッピードラッグ」?

 プロザックをはじめとするSSRIは、欧米などでは「ハッピードラッグ」と呼ばれ、乱用ともいえるほどに広く出回っている。

 

考え方1:ピーター・クレイマー

 ・プロザックは麻薬とはほど遠い。

 ・資本主義社会において、気分を改善し行動しやすくするプロザックに頼り、競争の場にとどまろうとするのは当然ではないか。

「プロザックは、社会的、生産的な活動に自由に没頭できるようにすることによって、喜びをもたらすからである。マリファナ、LSD、さらには、アルコールとも異なり、プロザックにはそれ自体が快楽の源泉ではないし、知的ゆがみも引き起こさない。プロザックは、喜びを喪失した人々に、〈正常な〉人々が享受しているような喜びの感情への道を開いてやるだけである。」    『驚異の脳内物質』

 

考え方2:賦活作用のもたらす問題

「コロンバイン高校事件」1999.4

・主犯エリックは、事件前の19984月から約一年にわたって合計10回、医師からSSRIのルボックスを処方されていた。しかも、事件の3ヶ月前から服用量を増加。解剖によって、エリックの体内から大量のルボックスが検出。

   →ルボックスの副作用が事件を発生させた要因では、と指摘された。

・共犯ディランは、衝動をコントロールできない少年を対象とした「怒りのマネージメント・クラス」を、エリックとともに受講。「怒りのマネージメント・クラス」ではほぼ全員が抗うつ薬を服用させられるのが現状なので、ディランもSSRIを飲んでいた可能性がきわめて高い。

 


被害者の一人が、ルボックスを製造販売したソルベイ社を告訴。

「ルボックスを含むSSRIと自殺・他殺には強い因果関係が認められるのだから、薬の副作用について適切な警告をしたうえで販売すべきであったにもかかわらず、警告を怠った」

 


ソルベイ社は、2002年にアメリカでのみルボックスの販売を中止。

※わが国では今でもルボックスは販売中止ではなく、同じ有効成分のデプロメールも別の製薬会社から販売され続けている。

 

 

 

「全日空61便ハイジャック事件」1999.7.23

・犯人の西沢裕司(当時28)1994年に一橋大学を卒業した後、JR貨物に入社したが、職場での人付き合いや共同作業がうまくいかず、うつに。

・うつが深刻化して自殺を願うようになった。

何度か自殺を図ったが、果たせず、精神科に入院。電気ショック療法、大量の抗精神病薬の投与を受けるが、効果はなく、精神科入院治療に不信    感と恐怖を抱くようになる。

・事件前年の19985月下旬から犯行直前までの14ヶ月に、精神科医によって大量のSSRIを処方される。(プロザック13週間、パキシル15週間、ルボックス2週間)

※当時、日本ではパシキルは未だ発売されておらず、プロザックは開発中止だった。どのようにして入手していたのだろうか???

 

いずれの事件においても、SSRIの賦活作用によって自殺衝動や攻撃衝動が高まったことが、狂行の一因となった可能性が高い。

SSRIは制止、無気力、気力低下などを「賦活」するだけでなく、衝動も「賦活」してしまい、自殺や他殺の危険性が高まる。

 

 

『★ハッピードラッグのリスクや副作用についても、消費者である患者に十分な情報を与えることが必要ではないか?

          ハッピードラッグの影の部分を認識したうえで、薬物療法の助けを借りたいという人が服薬するのは個人の自由である。』

 

 

 

参考文献

『薬でうつは治るのか?』 片田珠美 (2006.0921 初版)