断眠療法について
◆断眠療法とは
◉うつ病の中心的症状としての不眠
➜ 眠れないならいっそのこと眠らない。
・断眠療法は1950年代後半に、Schulteがうつ病患者が断眠により軽快するのを確認し、その後、1971年にPflugとTolleが治療結果をまとめて報告を行ったことより始まる。断眠療法には夜間全断眠の他、夜間後半部分断眠、レム睡眠断眠がある。当初は夜間全断眠が主流であったが、現在では夜間後半部分断眠が用いられることが多くなっている。
▶全断眠:24時間の断眠を行う方法。患者は看護師、家族などの協力のもと断眠を行う。
▶夜間後半部部分断眠:夜間睡眠の後半の断眠を目的とし午前2時頃覚醒させる。
(※全断眠と部分断眠は自宅でも可能である。)
▶レム睡眠断眠:選択的にレム睡眠を遮断する方法であるが、脳波上のレム睡眠を確認しながら行うため自宅では行えず、研究的に用いられることが多い。内因性うつ病ではレム出現の時間的配列に異常が指摘されており、これを改善すると考えられている。
◆断眠療法のメカニズム
・断眠療法は、概日リズムに影響を与えるのではないかとされることが多い。
(うつ病では生体リズム位相が前進しているため、断眠療法により睡眠覚醒の位相を前進させることにより正常化するというものである。)
・断眠療法によって、眠りを促すメラトニンというホルモンの分泌量が増えたという報告もある。
◆断眠療法の適応
・抗うつ薬の有害作用が出現しやすい患者
・循環器系等の重篤な合併症を有し薬物療法が十分行えない患者
・高齢者
・強い自殺念慮を有している患者
・難治性うつ病患 等
※特に、朝方に症状が悪化する日内変動を示すものには効果が高く、逆に夕方に悪化する場合は効果が期待できない。
◆治療の効果
・治療効果は夜間全断眠、夜間後半部分断眠いずれも60%以上であり、抗うつ薬の効果と同等と考えられている。
➜特に抑制、疲労、自殺念慮、抑うつ気分を呈する場合に効果的
✕断眠療法の有害作用・・・疲労、食思不振、頭痛、うつ状態の悪化、幻覚妄想状態 等
(※いずれも重篤となるものは無い。)
・断眠療法の効果は一般に1~2日しか持続しないので単独で用いるには十分とはいえない。
➜効果を持続させるためには、炭酸リチウムや三環系抗うつ薬、SSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害薬)、高照度光療法の併用が有効。