2006/10/20
ことばの習得と環境
104‐510 山口和嘉子
・ 乳児期に十分なことばかけが行われなかった場合
[例1] 狼に育てられた少女「アマラ、カマラ」
1920年、インドで狼に育てられていたところを発見、保護。
アマラ推定8歳、カマラ推定1歳半。発見当時はとても野生的で、4本足で歩き、生肉を食べ、夜になると遠吠えをするという状態であった。
その後、シング牧師の運営する孤児院にて育てられるが、アマラはわずか1年後に病死。ことばを発することはなかった。カマラはことばの獲得にはなんとか成功したものの、4年目にして6語、7年目で45語、9年目でやっと3歳児程度の会話ができる程度であった。
[例2] アヴェロンの野生児「ヴィクトール」
1797年に南フランスのアヴェロンで民家のごみを漁っているところを発見、保護。
11〜12歳の少年と推定されたが、感覚機能はほとんど発達しておらず、声は完全に唖の状態で、ただ一定の喉頭音(咳をする位置で調音される子音)が飛び出すだけであった。
その後、ジャン・イタール軍医に引き取られ、少年はヴィクトールと名付けられた。ヴィクトールという名は少年がO(オー)という響きを好んだためだと言われている。ヴィクトールは5年間にわたる教育の結果、多少のアルファベットを認知し、簡単なことばを読み書きできるようになり、感情や愛情の表現もできるようになった。
参考URL
・心理学トピックス1
http://www.sinri.co.jp/sinri/library/l7.htm
・ウィキペディア 『アヴェロンの野生児』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E9%87%8E%E7%94%9F%E5%85%90
前回の補足
正高 信男(まさたか のぶお)
1954年生まれ
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。現在は京都大学霊長類研究所の教授。
『ケータイを持ったサル』や『考えないヒト』(いずれも中公新書)などの著作で有名。