2007/07/27
養子縁組@
104-510 山口和嘉子
事例1 寄付金を強要する事業者「アドプション・ベビー会」
欧州に住む40歳代の日本人女性は、外国人男性と結婚したが、なかなか子どもができず、養子を探していた。日本からの養子斡旋ルートを調べるうちにベビー会の存在を知り、2001年春、事務所に連絡。
担当者の井上は「あなた方のために最善を尽くしたい」と丁寧な応対をするものの、斡旋費用については明かそうとしなかった。「ベビー会のスタッフはみんなボランティアで、手数料はいっさい取っていません。日本を出国するまで過ごす病院の預かり代などの経費は『寄付金』という形で払ってもらっています」連携先の病院の名も伏せ、そんな説明ばかりを繰り返した。
半年後、夫婦のもとにベビー会からファックスが届いた。
「双子の男の子の1人が養子縁組可能です。4万5千ドル(約550万円)の寄付金があれば、この赤ちゃんはほかの人に渡しません」
あまりの高額に夫婦が「高すぎて払えない。そもそも、双子を別々の家庭に引き離すべきではないのではないか」と訴えた途端、井上の態度は一変した。
「養子が欲しい人はあなたたちだけじゃないんですよ」
結局、夫婦は日本人養子を断念した。
夫婦は「最後まで斡旋費用の金額を伏せ、子どもが欲しい夫婦の心理を巧みに利用していた」と、井上とのやり取りを振り返る。
ベビー会は過去にもトラブルを起こしている。
・脳性麻痺の疑いを隠したまま、女児を斡旋。訴訟へ。
(→ベビー会が和解を打診。これに応じるかどうかをめぐって原告夫婦と弁護士の間で意見が一致せず、結局、原告側が訴えを取り下げる形で訴訟が終了。)
・斡旋費用が高いとの訴えに「障害児だったら安くする」と返答
・生みの母への意思確認が不十分なまま斡旋
しかし、斡旋活動は盛ん。
厚生労働省によると、2000年度から4年間でベビー会が携わった海外養子は48人。これは国内の8事業者のうちで最多。
多額の寄付金について、1992年に東京都に届け出た収支計画には「社会福祉を目的とする(養子の)斡旋は無料サービスが基本で、会費及び寄付金によって賄われている」と書かれている。
問題点
・不透明な経理なまま、必要な書類が揃った時点で都は届けを受理
・社会福祉法人の認可を目指したいとは言うが、現時点で法人化に向けた具体的な動きはない
参考文献 高倉正樹(2006)『赤ちゃんの値段』 株式会社講談社 p.16‐62.