平成19年3月20日
「イラク戦争への百年」
森奈津子
中東地域では第1次から第4次中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争と10年ごとに戦争が起きている。これは本当にアメリカが宣伝するように中東地域に住むイスラムの人々が「悪の枢軸」国家を形成しているからだろうか。
なぜ戦争が絶えないのか。その答えは歴史的背景にある。この地域は19世紀にイギリスのインドへの領土貫通戦略とロシアの南下戦略とが衝突するエリアであった。この列強国が繰り広げた「グレート・ゲーム」が今日の絶え間ない戦争の原因である。このときに行われた不自然な分割統治、そしてこの地域に住む人々を無視した行動が現在の混乱を起こしている。
現在イランにはイスラム国家が成立している。今までの第三世界の構造を根本的に破壊しかねないこのイスラム体制を、アメリカをはじめとする列強国は決して受け入れない。なぜなら、真に民主国家が成立した場合、200年以上に渡り作られてきた搾取の構造が機能しなくなるからである。イスラム革命が成功し民主的な政権が誕生するよりは、独裁的政権が民主主義を弾圧しながら利権を独占し、それが大国に流れ込むという構造を守り続けたいのである。そのために中東地域で起きた民主主義運動は徹底的に弾圧されてきた。
唯一の超大国であるアメリカは直接軍事力を行使して他の国家に公然と干渉するようになった。今日アメリカはイスラム政権の非合法性を訴え自らを正当化しようとしているが、中東の混乱の原因は大国のエゴによる分割統治と駒として動かす際のダブルスタンダードにあると言える。こうして民主主義を標榜する国が独裁政権を助け都合が悪くなれば軍事力を持って制圧するという構造ができている。こうした大国のエゴによる行為や不公正が是正されない限り中東地域に真の平和は訪れないであろう。
著者 黒田壽郎