平成19111

「日本人は北欧から何を学んだか」

森奈津子

 

日本と北欧地域はほぼ地球の反対に位置しており、地理的にも距離がある。そのため、直接的な交流が少ない事からいつの時代を見てもイメージが先行した、かなり極端な解釈がなされる事が多い。また第二次世界大戦以降、西側自由主義に組み込まれ、日本がアメリカと安全保障、経済に関して、密接な関係を構築していく中で、ヨーロッパとの関係は希薄にならざるを得なかった。このような状況の中で、市場規模がそれほど大きいわけでもなければ、軍事的脅威でもない北欧が日本から遠い存在になっていったのは、当然の成り行きである。こうして日本人は、実際の北欧を見ることなく、モデルとして紹介されたものに対して、それについて良い、悪いの評価をしていくようになった。

 交通手段、情報通信技術が未発達な時代においては、日本と北欧地域の距離はあまりにも遠い。また戦後においては、直接的影響が少ない地域に対してまで注意を払う余裕もなかった。しかし交通手段、情報通信技術が発達した現在の状況は、世界を小さくした。言い換えれば日本と海外の国々との距離は一気に縮まった。また日本も世界有数の経済大国となり、世界の発展のためにも日本の発展のためにも、国際協調が必要不可欠なものとなった。このような状況の中では単にイメージだけで話しをするのではなく、またモデルとしてのみ考えるのでもなく、相互理解が必要となる。

 

著者 吉武信彦