地上デジタル放送の問題点について

 

 

2003年から日本国内における地上デジタル放送が開始された。しかし現時点でもすでにいくつかの問題点が表面化している。そのうちの二点を挙げてみた。

 

[放送局の機材の不足]

地上デジタル放送(以下、地デジ)は高精細度テレビジョン、すなわちハイビジョンによってその映像が放送されるが、BSアナログハイビジョン実用化試験放送やBSデジタル放送により事前にそれ相応の設備が整っていたNHKはともかく、民放の、特に地方のローカル局などでは未だにハイビジョン対応の設備が整っていない局が存在するのが現状である。設備が整っていない局は従来の映像(画面比4:3)の左右に黒帯を入れることで画面比を強引に16:9にして(アップコンバート)送信している。しかしこれはあくまで地デジ開始初期の話なので、現在ではこのようなことを行なっている局は少ない。

 

[互換性]

 地デジの放送方式は大別してアメリカ方式(ATSC)・ヨーロッパ方式(DVB-T)・日本方式(ISDB-T)に分けられ、2003年には中国もこれらとは異なる新たな方式の開発を決定している。しかしこれらは共通点よりも相違点の方が圧倒的に多いため(※)、将来デジタル放送が本格化して海外との映像のやりとりが行なわれるようになった場合、方式の違いによる画質や音質の劣化といった悪影響が予想される。

※…NTSCなどの方式があるアナログ放送においても同様なことが言えるが、アナログ放送よりもこれは問題視されている。ちなみに地デジの音声はアメリカ方式ではAC-3(北米や日本のDVDで使用されている)、ヨーロッパ方式ではMPEG-2 BCMPEG1と互換性がある)、日本方式ではMPEG-2 AAC(ヨーロッパ圏のDVDMP3プレイヤー等でも使用されている。音質・圧縮率最優先のためMPEG1との互換性は排除されている)となっている。

 

[Xデー]

 しかし最大の問題ともいえるのは、2011724日をもって全国一斉に今までの地上アナログ放送が終了してしまうことである。これ以後日本国内では地上波ではデジタル放送しか見られなくなるわけだが、はたしてあと51ヶ月と15日でそんなことが、すなわち日本国内すべてのテレビを地デジ対応にすることは可能なのだろうか。ホームセンターやディスカウントショップなどの、低価格志向の小売店では未だにアナログ放送しか受信できないテレビが主力商品として販売されており、デジタルチューナー内蔵のテレビもあるにはあるが非常に高価でなおかつそのほとんどが20インチ以上の大きい製品なので狭い部屋向きとはいえず、一般家庭におけるテレビのありかたが『一家に一台から一人に一台』に変化している点から考えても、スムーズに普及しているとはとても考えにくい。また、白黒放送からカラー放送に移行した際も移行が完了するまでに10年以上かかっている(別紙参照)ことから、あと約5年以内にアナログ放送からデジタル放送に完全移行するなどほとんど不可能であるという見方が強く、そのXデーは延長されるだろう可能性が高いと見られている。