平成21124

未成年者の移籍に制裁(3)

104417 樋川 朋也

青田買いをする者と警鐘を鳴らす者

無秩序な青田買いの実情に警鐘を鳴らしてきたのが、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)会長のミシェル・プラティニだ。プラティニは、選手は自らの育ったクラブでデビューするべきだという理想を実現するべく行動してきた。そして、多くの政治家の支持を取り付けると共に、EU(ヨーロッパ連合)に対して、スポーツをEU労働法の適用外とすることを始めとした規制案。その目玉として、欧州内における18歳未満の選手の移籍を全面的に禁止するよう訴えた。

プレミア勢を始めとするクラブ関係者はカクタをめぐるFIFAの判決にもプラティニの意向が働いていると見ているが、真相がどうであれ、プラティニがこの問題に本気で取り組むつもりなのは間違いない。未成年者を保護したいというのが根底にあり、大人たちは巨額の金が動くサッカー界の特殊性をわきまえて行動すべきと考えている。

これに反論するのがイングランド・プレミアリーグのアーセナル監督アーセン・ヴェンゲルだ。彼はプレミアリーグにおけるフランス人選手の青田買いの先鞭をつけた張本人であり、それによって優秀な成績を収めている。ヴェンゲルは、「音楽の才能に秀でた子を持った親は何を望むか。一般の学校ではなく優秀な音楽学校に入学させたいと願うだろう。それがなぜ、フットボールの世界では、優秀なクラブに行く道を閉ざされるのか。」と語っている。

こうした動きに対する反応は様々だ。監督を指導する機関のトップに立っているジェラール・ウリエはプラティニを支持している。かつてリバプールの監督としてヴェンゲルと並び、青田買いを行っていた過去を持っている人物である。

フランスのクラブにしても二枚舌を使っている。10代前半の選手を、セネガルなどのアフリカ諸国からスカウトするときには、チェルシーやマンチェスター・ユナイテッドと同様の手口を使う。自らを被害者と主張するフランスのクラブもまた同じ穴のムジナである。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考書籍

(2009) 『ワールドサッカーダイジェスト115日号』 日本スポーツ企画出版社