平成21年11月20日
未成年者の移籍に制裁
104‐417 樋川 朋也
選手を盗んだ『窃盗罪』でチェルシーに重い処分
ガエル・カクタ、ポール・ボグバ、ジェレミー・エラン。いずれもプロデビュー前のティーンエイジャーで、それぞれ現在はチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティの下部組織に在籍する。
しかし、もともとはフランスのクラブで育成された選手たちで、引き抜きに遭ったRCランス、ル・アーブル、レンヌの各クラブは、自分たちが育てた選手たちが不当に奪われたとしてFIFAに提訴。2009年9月、カクタをめぐるランスとチェルシーの係争に最初の判決が下された。
移籍問題を専門に取り扱うFIFAの調停機関、DRCはランス側の主張を全面的に認め、2007年にチェルシーがランスからカクタを獲得する際に、フランスの権利規定に抵触したとしてチェルシーに重い処分を下した。
処分の内容は、2011年1月まで、一切のリクルーティング行為を禁じるもの。つまりチェルシーは来年の冬と夏、2度の移籍期間で国内外を問わず新戦力を獲得できないことになる。この処分と併せてチェルシーには、ランスに対する賠償金として90万ユーロ(約1億2600万円)の支払いが命じられた。
この判決を受けてチェルシー側は、ただちにCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴えを起こした。11月6日、CASは選手獲得禁止処分を一時凍結すると発表した。CASがこの件の最終決定を下すまで、これらの処分は執行停止となる。
FIFAはカクタ自身にも4ヵ月の出場停止と78万ユーロ(約1億1000万円)の罰金の支払いを命じているが、こちらも同様に執行停止となっている。
結果がどう転ぶにせよ、FIFAが今回下した判決は、未成年者(ヨーロッパでは一般的に18歳以上を成人とみなす)の選手の移籍の在り方を根本から変えるだけのインパクトを持つ。場合によってはボスマン判決並のものになるかもしれない。
参考書籍
(2009) 『ワールドサッカーダイジェスト11月5日号』 日本スポーツ企画出版社