平成21年9月8日
中田英寿(15)
104‐417 樋川 朋也
1. ペルージャ訪問(2)
ペルージャの監督のカスタニェールとの話し合いが終わり、夕方になって、クラブのスタッフが、中田をACペルージャのスタジアムに案内したいと申し出た。中田はその言葉に従い、彼らのホームグラウンドに向かった。その後、街の観光にも連れ出された。
ホテルに戻ると、迎えの車が到着していた。中田たちは、ウンブリア州からラティオ州にあるアルファトーレ城へ向かった。アレッサンドロ・ガウチに出迎えられた中田たちは、フットボールのクラブのスタッフと、移籍についての話し合いをするためにイタリアに来たはずなのにと困惑していた。
深夜の一時を回り、夕食の宴が終わり掛けた頃、アレッサンドロが中田を除いた全員で打ち合わせを行うことを提案した。次原はそれを承諾した。
打ち合わせの中で、アレッサンドロは今ここで中田のACペルージャへの移籍を決定して欲しいと要求した。移籍金や年俸など、すべての条件を呑む用意があると伝えたうえでのことだった。
次原は、ベルマーレ平塚への移籍金に関しては、代理人のゴードンや中田自身にも口を挟む権利は無く、あくまでクラブ同士の問題だと答えた。
しかし、アレッサンドロはあきらめずに、この場でペルージャ入りに『イエス』と答え、翌日のボローニャ訪問を中止してほしい。『イエス』と言わなければ、アルファトーレ城から出られないとまで言ってきた。
ゴードンは複数のクラブから誘いを受けている中田が今すぐに結論を出すことはない。もう一度中田も交えて話し合いをすることを要求した。アレッサンドロはついに諦め、その日の話し合いは終わった。
中田を含めてもう一度ペルージャというクラブについて話し合うことにした。次原に打ち合わせで告げられた話を聞き、驚いた中田はゴードンに対し、ペルージャについての意見を求めた。ゴードンからは、『もし、今日ここで、中田の移籍を決定してくれたら、君に成功報酬を即座に渡す用意がある』という話を持ちかけられたことを告白された。ゴードンは『これがフットボールの世界の常識なんだよ。ヒデはこんな世界で戦わなければならないんだ』とも答えた。
結局、ペルージャへの即答は避け、検討するための時間をもつという結論が出たが、次原のもとに掛かってきた電話で新たな問題が起こったことを知ることとなった。
共同通信の記者から掛かってきた電話の内容は、イタリアの新聞に、中田のペルージャ移籍ほぼ決定という記事があるが、その真偽を確かめたいというものだった。
参考書籍
小松成美 (1999) 『中田英寿 鼓動』 幻冬舎