平成191019

ゼロジャンル

                               104-221 坂田

 このゼロジャンルという言葉は、作家の新城カズマが著書『ライトノベル「超」入門』にて提唱した造語である。

これまでのライトノベルでは、SFやファンタジー、ホラーといった様々なジャンル小説の要素や設定などを取り入れていた形式が主であった。しかし、だんだんとそうした他ジャンルから持ち込んだ要素を使い続けてきた結果、元のものとは異なるくらいに特化していった結果、段々と普通の「私小説」や「青春小説」に近付きつつある、と新城カズマは語っている。

これに平行して、『バッテリー』(あさのあつこ 角川文庫)や、『博士の愛した数式』(小川洋子 新潮社)などの一連の泣かせ小説群が評判になっているなどの一連の動きをまとめ、「これまでのジャンル・フィクションのアイテムとか設定とか、あんまし気にしない、ふつーに“良い話”“じーんとくる話”」の総称としてゼロジャンルという言葉を提唱した。

また、こうしたゼロジャンル的なライトノベルが行き着くところまで行き着くと、結局は「ふつーの良質な青春小説」、つまり「ゼロジャンル小説」に至るのではないか、と新城カズマは考えている。

Wikipediaではゼロジャンルをライトノベルの1ジャンルとして扱っているが、新城カズマの考えでは、ライトノベルと一般文芸の架け橋となるような、一般小説とライトノベルの隙間を埋めるような作品として、ゼロジャンルという言葉を挙げている。

こうしたゼロジャンル的な小説は、以前にも何回か発表したライトノベルと一般文芸の越境が深く関係しており、こうした「一般文芸的なライトノベル、ライトノベル的な一般文芸」がゼロジャンル小説と呼べ、最近刊行点数を増やし始めている。

 

主にゼロジャンルと呼ばれる小説

『図書館戦争』 有川浩 メディアワークス 2006

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』 桜庭一樹 富士見書房 文庫版2004 単行本2007

『ブレイブストーリー』 宮部みゆき 角川書店 単行本2003 文庫版2006

『おいしいコーヒーのいれ方』 村山由佳 集英社 単行本1994 文庫1999

 

参考文献

『ライトノベル「超」入門』 新城カズマ ソフトバンク新書 2006

参考URL

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%AB