平成19928

ライトノベルは本当に売れているのかA

   〜過去の売上との比較〜

                               104-221 坂田

 ライトノベルが本当に売れていると言えるのか、ということで実際に過去の売上との比較を行ってみる事にした。

 残念ながら調べた限りでは具体的な数字が出てこなかったが、実際に編集や作家の方の発言を元に比較を行う事にした。

 前スニーカー文庫編集長である野崎岳彦氏が2006年に日経BP社からのインタビューで語った言葉によると、ライトノベルが本当に売れていた時期は10年前であり、その頃には初版24万部、28万部という作品がごろごろしていたとの事である。

 また、現スニーカー文庫編集長である女井正浩氏は、ライトノベル自体は、『ロードス島戦記』(水野良)や『スレイヤーズ』(神坂一、富士見ファンタジア文庫)、『ブギーポップ』(上遠野浩平、電撃文庫)などのシリーズが最大のヒットだったと、まんたんウェブ掲載の編集長がゆく!というコラム内で語っている。

 同様に、作家である五代ゆうも『ライトノベル作家のつくりかた』でのインタビューにて業界で一番売れた作家は誰か、という質問に対し、『スレイヤーズ』の神坂一、『ロードス島戦記』の水野良、『サクラ大戦』等のあかほりさとるという所謂約10年前の人物を挙げている。

 こういった発言を聞く限りでは、十年前と比べると実際にはそこまで売れていないようにも思える。では実際の所はどうなのか。

 これに関しては、現スニーカー文庫編集長である女井氏が同編集長がゆく!のコラム内にて、確かに売り上げ的には伸びていて、レーベルも、発刊点数も増えているが、何冊も買っていく読者が多いので、一人当たりが購入する点数を考えると、単純に広がっているとは言えない状況である、と語っている。

 また、出版界の実状として、未だに出版業界全体が不況の為、マンガ雑誌などの廃刊が相次いでおり、出版業界で、新しいレーベルなどを立ち上げて作品数を増やし、一作あたりの発行部数を減らす、という戦略へと移行していった、という事もある。このシステムは本の種類を増やす事によって、「書店の売り場の棚取り戦争」に勝ち抜くとともに、一種あたりの冊数が減る事によって返本率を下げるという考え方である。

 このシステムによって、10年前ならば初版で20万部など刷っていたレベルの作品でも、まずは初版1万部、2万部程度で刷り、実際に読者の評判や売れ行きの良い作品のみ、次の版の発行や、シリーズ化が行われる、という状況が生まれた。

 以上の点を纏めると、現在のライトノベルの売れ行きは確かに向上はしているが、初版部数などは10年前と比べて劣っている。しかしながら、実際に売れているように見えるのは、現在の出版業界全体の不況によって、相対的にライトノベルの占める割合が上昇してきている事、ライトノベルの一冊あたりの部数自体は減っているが、全体的な種類や数の増加が挙げられる。

 

参考文献

『ライトノベル「超」入門』 新城カズマ ソフトバンク新書 2006

『ライトノベル作家のつくりかた 実践!ライトノベル創作講座』 浅尾典彦&ライトノベル研究会 青心社 2007

 

参考URL

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20061003/111060/

http://mantanweb.mainichi.co.jp/web/2007/06/post_1091.html