2008年1月11日

104−098

岡崎正尚

 

<精神障害犯罪者に対する矯正教育>

〜概略〜

2005年に医療観察法が制定され、重大な犯罪を行ない、心神喪失・耗弱により不起訴、起訴猶予、執行猶予、無罪となった者に対する処遇が定められた。これまでは、触法精神障害者への治療は、一般医療の枠内で行なわれてきたが、現在は専門家たちにより、社会復帰に向けた治療体制がとられている。

*入院対象者の特性

・精神障害と他害行為との関係の洞察が必要。そのため、介入方法が複雑化。

・精神障害に罹患しているため、病識、自分の犯罪の重さへの理解が欠如している場合がしばしば存在する。そのため、治療の必要性を理解していない事があり、治療を拒否する者も存在する。そのため、入院者に対しては、治療に対する動機付けを行う関わり方をしていく必要がある。

 

また、精神障害がどのような状態にあるかによって、設定される治療目標もそれぞれ異なってくる。

 

*各ステージにおける治療期間と治療目標

ステージ

治療期間

治療目標

急性期

3ヶ月

     初期評価と初期の治療計画の作成

     病的体験・精神状態の改善

     身体的回復と精神的安定

     入院対象者との信頼関係の構築

     治療への動機付けと確認

回復期

9ヶ月

     日常生活能力の回復

     病識の獲得と自己コントロール能力の獲得

     評価に基き計画された多職種チームによる多様な治療

     病状の安定による外出の実施

社会復帰期

6ヶ月

     社会生活能力(服薬管理、金銭管理等)の回復と安定

     社会復帰の計画に沿ったケアの実施

     継続的な病状の安定による外泊の実施

 

 

*治療プログラム概要

プログラム

内容

集団プログラム

     物質使用障害プログラム(薬物依存傾向がある者に対する、薬物教育を中心としたプログラム)

     CTB入門(認知行動療法入門=CTB:幻聴や妄想などの病的体験に対する認知行動療法を基礎とした疾病教育プログラム)

     思考スキル強化プログラム(認知療法を基礎)

     ヘルスプロモーション(健康全般に対する疾病教育プログラム)

     ウィメンズヘルスプログラム(女性特有の疾患に対し、疾病教育や芸術療法を取り入れたプログラム)

また、生活能力の向上を目指し

     調理プログラム

     生活技能訓練

     余暇プログラム

個別プログラム

     集団プログラムの内容を、各対象者のレベルに適した形に改変して行なうもの

     始めから個人に特化したテーマに基いて集中的かつ継続的な戦略を立てて介入を行なうもの

 

<参考文献>

『犯罪心理臨床』・生島浩・2007年・金剛出版