2008117

104−098

岡崎正尚

 

<福祉最後の砦へ>

・刑務所収容人数の増加

刑務所では、1992年頃から収容人数が増加している。1992年には新確定受刑者は2万人だったが、2004年半ばには3万数千人となる。1992年、年末受刑者数は3万数千人だったが、2004年には65千人程度となる。

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しかし、増加している受刑者は、50歳以上の中高年や精神障害者、外国人受刑者である。元気な受刑者は殆ど見られない。外国人受刑者は、犯罪組織の人間ではなく、一般市民が不法就労を行い、犯罪者に転落した事例が多い。言葉も解らない場合が多々ある。また、囚人の中では身体的、精神的に問題のある者が増えている。そのために、刑務所の労働能力は低下している。

*精神障害受刑者の新確定者・・・・1991年は600数十名(知的障害はうち200名程度。精神障害300名程度であり、神経症は僅か)。2005年には2100名(知的障害はうち200名程度。精神障害1300名程度。神経症400名程度)。

*外国人の新確定者・・・・1990年には700名程度。2005年には2400名前後。多くを占めているのは韓国人と中国人である。韓国人の割合はさほど変らないが、中国人の割合は数倍である。米国人の割合は一貫して微小である。

 

・高齢・死亡受刑者の増加

2003年には、1993年と比較し、60歳以上の高齢受刑者の総人口は、1,3倍程度に跳ね上がっている。そして、2003年には、死亡受刑者数は1993年の3倍近くへと跳ね上がっている。死因は、がん、脳溢血、肝臓障害、心疾患など多岐にわたり、全てにおいて死因が増加している。2001年の時点までは、死亡受刑者は93年の時点の2倍であり、2001年を境に死亡者の増加割合は大きくなっている。しかし、高齢受刑者以外の受刑者の死亡率は上がっていない。つまりは、高齢受刑者が多く死亡していると思われる。

・受刑者の状況

*受刑者の完全失業率は増え続けている。97年では3%強、2003年では5%弱である。

*配偶者の無い受刑者も増加傾向にある。多重累犯者、逮捕時無職者、要介護者、本件無銭飲食者ほど、再犯率は高い。

 

・厳罰化

*他殺による死亡人員は、1984年の時点では千百数十名だったが。2004年時点では六百数十名である。殺人件数は減っており、凶悪犯罪も増加しているとは言えない。

*無期受刑者は、2000年時点では新確定数は60名前後だったが、2004年においては140名近くである。2000年時点では、年末確定者は1000名だが、2004年時点では1300数十名である。

*無期の仮釈放者は、近年は一桁に留まっている場合が多い。

*無期懲役の適用として、一昔前はヤクザの抗争による射殺事件では滅多に無期にはならなかったが、最近では死者1名のヤクザ抗争事件でも、実行犯や首謀者に対し容赦なく無期懲役の判決が下るようになった。

 

<参考文献>

『犯罪不安社会』・光文社新書・200612月・浜井浩一