2007年6月15日

104−098

岡崎正尚

 

<少年刑務所における処遇の限界>

 

(発達障害の少年犯罪者について)

現在、矯正教育の多様化、個別的処遇計画の作成が、少年刑務所において進められている。

                ↓

しかし、一人ひとりに対して、教官がきめ細かく指導していく少年院と異なっており、其処に限界もある。スウェーデンでは、100人以上入所している刑務所を造らないようにしているらしい。人間らしい処遇が出来ないため、という事である。

                ↓

発達障害の少年受刑者等に対しては、矯正教育に限界がある。

・不定期刑を科せられた場合、現在の情勢の下では、満期近くまで入所させられ、その後、指導、監督の無いままに社会に放り出される可能性が高い。

・矯正のためには、精神的発達を促す必要がある。気持ちの高ぶりから反省の弁を述べる状態になっても、あまり意味が無い。育て直しが必要らしい。

 

(刑務所と少年院の差)

黒羽刑務所には、精神障害、知的障害、身体障害、認知症老人が入所している。黒羽刑務所は一般刑務所である。アスペルガー症候群、ADHD、LDの可能性が高い受刑者も散見された。

黒羽刑務所での会話の例

囚人1「おいお前、先生(刑務官)の言うことを聞かないと、刑務所にぶち込まれるぞ」

囚人2「僕、刑務所なんて、絶対にいやだ。ずっとここに置いといてくれ」

これは、黒羽刑務所内の、一般懲役を務める能力(知的、肉体的な)を欠いた囚人を収容する寮内工場で行なわれた会話である。答えた側は真面目だった。自分の居場所を理解していないらしい。この会話を横で聞く刑務官は「作業中におしゃべりしたり立ち上がったりしちゃー、いけませんよー。もう少しで作業時間は終わりですから、それまで我慢しましょーね」と先生のように優しい口調で注意したらしい。

これらは、一般刑務所での光景である。

                ↓しかし

2000名を超える黒羽刑務所では、医師の数が不足。週二回の診察であり、精神科医は居ない。専門技術を持つ職員も居ない。当然、カウンセリングなど行なわれない。障害者は、薬漬けの状態である。

                ↓出所後、福祉へのリンクが必要だが

刑務所よりも少年院の方が、福祉へのリンク率が高い。理由は

・少年院の方が、細やかな処遇措置を取りやすい。いろいろな機関に働きかける。刑務所でも、出所後にケアをしようとしているが、引き取り手が見つからないケースが多い。

・少年院では、教官とのマンツーマンによる、細やかな教育的、処遇的配慮をしており、そのために、教育効果が高くなる。

                ↓少年刑務所では?

少年刑務所での処遇の一例だが、川越刑務所に入所していた知的障害のある元服役囚は、工場内でずっと紙折をさせられていたらしい。川越少年刑務所では、熱意はあってもマンパワーが不足している状態だった。

 

平成18年度の予算では、収容者の一日辺りの収容費は、刑務所では1277円、少年院では2109円であった。教育経費は、刑務所14円、少年院は148円である。

 

<参考文献>

少年犯罪厳罰化私はこう考える・2007年6月・洋泉社・佐藤幹夫、山本譲司他