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岡崎正尚

 

<性犯罪者に対する矯正教育>

平成185月に「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が施行され、矯正処遇が法的義務となり、性犯罪再犯防止指導は、特別改善指導の一つとして開始された。平成19年現在、全国20の刑務所で、性犯罪再犯防止指導が実施されている。

*性犯罪調査対象者選定基準

ア・性犯罪受刑者概念への適合からの判断・・・・性犯罪者、重大な性犯罪のリスクがあり再犯可能性が高い者

イ・常習性・反復性が認められる者達・・・・性犯罪による処分歴または前科があるもの。常習性反復性が認められる者

ウ・性犯罪に繋がる問題性の大きさからの判断・・・・被害者に13歳未満の者が含まれている者、被害者が死亡している者、必要が特に認められる者。

エ・調査適合性・・・・日本語能力、知的能力などの点で、明らかに実施が困難または不適合とは思われない者。

オ・性犯罪者調査対象者・・・・アに当たるものの内、イまたはウに当たり、エの除外理由が無いものを性犯罪調査対象者とする。

*調査項目

・リスク・・・・再犯可能性の大きさなどから判断。

・ニーズ・・・・社会的影響、親密さの欠損、性的な自己統制、性暴力を容認する態度、監督指導への協力、一般的な自己統制の6項目から性犯罪に繋がる問題の程度を判断し、受講が必要なプログラムや処遇の目標とすべき点を判断。

・処遇適合性・・・・身体的・精神的問題、知的能力などで判断。

*プログラムの内容

1・密度・・・・受講科目と受講期間の差で密度別に振り分けられる。

2・科目・・・・受刑者の不安を軽減し動機付けをするために行なわれるオリエンテーションを経て、自己統制、認知の歪みと改善方法、対人関係と社会的機能、感情統制、共感と被害者理解、総仕上げとしてメンテナンスプログラムが行なわれる。

3・プログラムの中心技法

・認知行動療法・・・・認知が感情と行動に影響しているという仮定の下、認知の歪みを修正させることに重点を置く。認知行動療法は行動を変化させられるという意味で、犯罪全般の再犯防止に効果がある。

・リプラス・プリベンション・・・・問題行動に繋がるトリガーとライフスタイルパターンを特定し、トリガーを避けたりパターンを変えたりと言ったことで問題行動を防止していく治療モデル。性犯罪者に適用した場合、行動制限が多く対象者の意欲を下げやすい、否定的経験が問題行動に繋がるという、リプラス・プリベンションの前提が成立しないものも少なくない。日本においては、リプラス・プリベンション・モデルを拡大した自己統制モデルを導入している。

・グループワーク・・・・標準構成は対象者8名、指導者2名である。指導者は対等で互いに敬意を示す関係のモデルを示すよう、男女2名が望ましいとされている。また、対象者と治療者は共同して目標に向かう「治療同盟」が望ましいとされている。

 

<参考文献>

『犯罪心理臨床』