104-098
岡崎正尚
2006年6月30日
犯罪に対する視線の変化
・犯罪による死者の少なくなった日本
近年、凶悪犯罪の増加という言説がまことしやかに囁かれている。しかし、本当に凶悪犯罪は増加しているのか。
大正時代は、故意の犯罪による死者は二千数百人で推移していた(13年と15年には三千人台)。
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昭和2年に二千台となったのを最後に、昭和11年までの間は、千数百人、といった数値で推移する。
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戦後においては、故意の犯罪による死者は、昭和42年から今日まで、千数百名程度で推移している。厳密に言えば、昭和42年と今日では、死者の人数は減少している。
結論としては、故意犯による犯罪による死者は、戦前と比べれば減少している。にもかかわらず、何故、凶悪犯罪が増加しているかのように言われているのであろうか?
・何故、残虐な殺人が増加しているように思えるのか
体感治安・・・・体感治安とは、住民が肌で感じる治安の事である。つまりは、知識や体験ではなく感覚に基づくものであり、報道や世論によって操作する事が容易である。マスメディアは体感治安の悪化を憂慮しているが、体感治安を改善するには、犯罪報道を無くすのが一番手っ取り早い。
犯罪に対する意識の変容・・・・昔から、残虐極まりない犯罪はあった。にもかかわらず、残虐な犯罪が起きると、昔はその様な事が無かったかのように報道される。それにより、近年になってから残虐な犯罪が続発しているかのような印象を世間は受ける。また、昔は、犯罪被害者が注目されていなかったが、近年になり注目されるようになった。そして、被害感情が世間に知られる事で、世間は、残虐な犯罪が増えているという印象を受ける。
このように、犯罪による死者は近年になってからは寧ろ減少しており、少なくとも、犯罪による死者に関しては、憂慮する必要性は乏しい。
参考文献
芹沢一也、2006、『ホラーハウス社会』(講談社)
内務省統計
警視庁統計