11月17日

104−098

岡崎正尚

・警察官、元警察官の犯罪

 

吉原杉戸屋七人切り

明治13年7月23日、二等巡査徳永敏(28歳)は、東京の遊郭、杉戸屋に日本刀を持って怒鳴り込み、7名に切りつけ、2名を死亡させた。徳永は、犯行数日前、杉戸屋で遊興していたところ、当初言われていた料金より多く取られ、その分の持ち合わせがなかったため、危うく自分の勤務する分署に連れて行かれそうになり、失職の憂き目にあった。其の事を恨んでの犯行であった。徳永は、情状酌量され、除族(徳永は士族だった)のうえ、懲役10年の判決を下された。

 

警察官女囚陵辱事件

1917年6月6日、警視庁鑑識課の巡査、香川馨(38歳)は、拘置所女囚6名を取調べと称して全裸にし、そのうちで一番若かった女囚を便所に連れ込んで強姦した。更に、16年11月から17年6月までに、前期事件を含め5名を陵辱したことが捜査の過程で明らかにされた。香川は、予審では全面自供していたが、公判では猥褻行為のみ認めた。6月6日の事件以外の事件で犯された女囚は香川の告発には加わらなかった。鑑定の結果、6月6日事件の被害者、加害者双方は重い淋病にかかっており、6月6日事件の被害者の下着からは、精虫が検出された。香川は、懲役2年の判決を受けた。

 

大阪天王寺の、現、元警官強盗殺人事件

 1918年7月31日白昼、銀行から1900円をおろした商店店員が、警察官に偽札調査を理由に派出所に連れ込まれ、博し要り封筒と現金をすりかえられるという事件が起こった。犯人は上がらなかった。そして、19年12月26日夜、大阪市の民家で15歳の少女が絞殺され、押入れに死体を押し込まれていた。死体の第一発見者は少女の母だった。少女の父親は、株の取引で知り合った西村松太郎(24歳)という男に誘い出され、外に出かけていった。警察が西村に事情を聞いた所、西村松太郎は犯行を自供した。そして、西村は、京都市巡査の窪崎慶之助(27歳)、元巡査の佐竹政吉(27歳)が、殺人の実行犯であると自供。佐竹を逮捕したところ、佐竹と窪崎が18年の詐欺事件の犯人であることも自白した。4日後、窪崎も逮捕される。佐竹、窪崎は、当初は少女の父親も殺害する予定だったが、少女を殺した時点で恐怖心を覚え、何も取らずに逃走した。西村は危機感を覚え、東京に高飛びしたわけだった。窪崎、佐竹に死刑、西村には無期懲役が宣告された。

 

制服警官安田銀行強盗殺人事件

 1933年6月18日、岡山県安田銀行支店長の自宅を、同県巡査、小川郁夫(28歳)が、銀行の門が開いていたので盗難がないか調べに来た、と言って訪れた。支店長は、小川と共に銀行に向かったが、何時までたっても帰ってこなかった。支店長の妻は、不安になり、支店長次席を呼んで、支店の金庫を開けさせた。中には、支店長の死体が横たわり、現金3万円と有価証券が消えていた。小川は逮捕された。動機は、芸妓の身請け金に困って、という事だった。談笑しながらコードを支店長の首に巻きつけて、絞め殺した。小川は、死刑判決を受けた。

 

警官無理心中事件

 1951年、東京都杉並区で、25歳の巡査部長が、義父の妻子をピストルで殺傷し、自分も自殺した。動機は、食べ物の点で差別されたためらしい。

 

制服警官女子大生強姦殺人事件

 1978年1月1日、現職警官(20歳)は、巡回を装って女子大生宅を訪れ、女子大生を強姦、殺害した。物音に気付いた家主が部屋をのぞくと、巡査は、110番を命じた。巡査は、当初、何食わぬ顔で捜査に加わっていたが、ついには自供した。死刑が求刑されたが、無期懲役の判決が下った。

 

大阪府警賭博汚職事件

 大阪府警の管轄地区のゲーム喫茶のゲーム機に現金をかけられるようにしておき、業者が警察官に賄賂を送り、情報を横流しにしてもらっていた事件。1982年に巡査長が逮捕され、表面化した。4人が逮捕され、120人が行政処分を受けた。事件の周辺では自殺者も出ており、謎が多い。

 

警察官サラ金強盗事件

 1983年1月、千葉県のアコムに、30歳の警察官が強盗に入り、社員4名に捕まり、逮捕された。

 

現職警官泉州銀行強盗事件

 1984年3月1日、大阪、泉州銀行に、警部補(42歳)が押し入り、1000万を強奪して逃げようとしたが、行員や客に取り押さえられた。

 

現職警官幸福相銀強盗事件

 1984年4月24日、大阪府の銀行に、巡査長(43歳)が散弾銃を持って押し入り、121万を奪った。猟銃から足がついて逮捕された。

 

元警官連続強盗殺人事件(広域指定115号事件)

 1984年9月4日、京都府で警察官が刺殺され、拳銃を奪われた。それから二時間後、現場から2キロ離れた大阪府のサラ金で、店員が射殺され、73万円が奪われた。事件は広域指定115号事件に指定され、両事件から5日後、広田雅晴(41歳)が千葉県の実家近くで逮捕された。広田は、元巡査部長だったが、強盗事件を起こして首になった、という前科があった。前科では懲役7年が下されていた。無罪を主張していたが、1997年12月、死刑が確定。

 

現職警官佐賀信金強盗事件

1988年5月、警部補(46歳)は、佐賀信金で28万円を奪い、逃走途中で職務質問を受けて逮捕された。

 

大阪府警官収賄事件

 大阪府巡査長(38歳)は、暴力団から1200万円の賄賂を受け取り、見返りとして取締りなどの情報提供を行なっていた。1990年10月3日に逮捕された。巡査長は、ローンの返済に追われていた。

 

連続誘拐殺人事件(広域指定118号事件)

 1991年5月、塗装会社社長が誘拐され、身代金と引き換えに開放された(千葉事件)。千葉事件主犯の迫康裕(50歳)、共犯2名が逮捕された。そして、取調べが行われるうち、2件の殺人が発覚した。迫とNという共犯者は、89年の塗装会社社長誘拐殺人事件(福島事件)にも関与しており、また、迫は86年に起こった金融業者殺害事件(盛岡事件)にも関与していた。盛岡、福島両事件に関与していたのは、迫を除けば、盛岡事件主犯岡崎茂男(37歳)、福島事件主犯熊谷昭孝(48歳)、熊谷の弟のKM、別の共犯者SKだった。岡崎茂男は、元岩手県警捜査一課の敏腕刑事であり、岩手県の幼児誘拐殺人事件の捜査に携わったこともあった。岡崎は遅れて91年10月31日に逮捕された。盛岡、福島両事件に関与した5名に死刑が求刑され、1995年1月27日、岡崎、熊谷、迫の3名に死刑判決、KMSKの二名には無期懲役判決が下された。Nは病死し、福島事件のみ関与のII被告には、無期懲役の判決が下された。2004年6月25日、一審で死刑が下された3名の死刑は確定した。

 

警察官連続強姦事件

神奈川県巡査部長(29歳)は、2001年3月19日、白昼堂々若い女性をビルに連れ込んで現行犯逮捕された。1999年から同種の事件を繰り返していた。

 

《参考文献》

明治大正昭和平成事件犯罪大事典