好色三人女

 

八百屋お七

天和21682)年1228日、江戸に大火が起こった。駒込大円寺から出火し、下谷、浅草、本所から本郷、神田、日本橋まで燃え広がった。大名屋敷75、旗本屋敷166、寺社95を焼き3500名の死者が出た。

この大火で、八百屋太郎兵衛の家も焼けた。一家は正仙寺に避難するが、太郎兵衛の娘・お七は、そこで生田庄之助と出会い、結ばれた。新居が建ち、家に戻ったお七は、庄之助に再会したい一心で、放火を企て実行して捕らえ、天和3329日、鈴ヶ森刑場で火炙りの刑に処された。この事件は、伝承のため諸説あり、お七の起こした放火が、天和21228日の大火とする説、お七の恋人の名を吉三郎とする説などもある。

 

ある名門女子大生

 2005年4月、名門で知られる女子大に通う22歳の大学生が、彼氏の自宅に火をつけるという事件を起こした。別れ話のもつれから、交際相手の男性宅にライターで火をつけた紙袋を投げ込み、木造2階建ての家を半焼した。

 犯人の女子大生は、小さい頃から華道や油絵を習い、中学から女子校に通い、まさに箱入り娘として育てられた。頭脳優秀なだけでなく、容姿にも恵まれ、大学のミスコンにも出場したこともあるという、才色兼備の令嬢だった。

 父親は有名大学の教授を務めた教育者で、特に躾に厳しく、娘と衝突することもあった。そのため何かと口実をみつけては、友人のところに外泊するようになった。学業にも身が入らなくなり、大学も欠席がちで、キャンペーンガールなどのアルバイトをして過ごし、留年となっていた。

 

くまぇり

2006728日、長野地検松本支部は長野県諏訪市湖南、飲食店手伝い、平田恵里香容疑者(20)を建造物等以外放火の罪で長野地裁松本支部に起訴した。

平田被告は、526日未明、下諏訪町の自動車販売修理会社の駐車場で、乗用車1台のエンジンルームに新聞紙を入れ、灯油をかけて火をつけたほか、軽自動車の助手席付近にも灯油をまき、放火して車5台を焼いた。動機について同被告は、自動車販売修理会社の従業員の態度に腹が立ったと供述。

7月31日、母校の諏訪西中学校(同県諏訪市)の体育館が全焼した火事(5月11日)など、ほかに8件の犯行を自供した。県警捜査1課は同日、諏訪署に捜査本部を設置した。

8月2日、現住建造物等放火容疑などで同被告を再逮捕。
 平田被告は一連の放火について、「火事になれば人が集まる。それがわくわくして面白かった」「諏訪を有名にしたかった」などと供述しているという。

 「くまぇり」の芸名で芸能活動をしたいと考えていた。

 

女性の放火の特徴

 男性で放火事件を起こすケースは、安心感が乏しく、過敏で内気な人が多く、統合失調症に罹患している場合や、ひどい虐待を受けたケースが目立つ。どちらかというと、地味なタイプの人が大部分を占める。

 それに対して、女性の場合は華やかで魅力的なタイプが少なくない。また、自己顕示性が強く、性や外見に強いこだわりがある。こうしたタイプは演技性人格障害と呼ばれるものに典型的である。

 演技性的な傾向を持った人は、意外に堅物で、厳格すぎる家庭の出身者に多い。そういった家庭に反発し、タレント志向をもち、有名になりたい、注目を浴びたいという願望を強く抱いてしまう。

 顕示的欲求は、一旦満たし方を間違えると、どんどん病的な方向に刺激と力の誇示を求めるようになる。自分がみじめで、非力な存在であるほど、わずか一片の炎によって大混乱を引き起こすことができる付け火の誘惑は、強烈なものとなる。

 

参考文献

爆笑問題 (2005) 『ニッポンの犯罪12選』、 幻冬舎

岡田尊司 (2005) 『誇大自己症候群』、 筑摩書房

 

参考URL

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060729k0000m040082000c.html

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060731-00000068-jij-soci