「ムカツク」という一語
使用頻度
中学生が最も多く90%以上の中学生が日常的に「ムカツク」を使っており、1日に10回以上使う者が男女とも全体の半数前後をしめた。高校生は、これより若干頻度が落ちるが、大半の者が使っている。
どんなときに「ムカツク」のか
「雨の日」「朝寒い」「自分の思い通りにならない」や「相手が子どもというだけで謝罪しない大人」「細い道なのによけようとしない大人、こちらがよけても無視する大人」などさまざまである。
私的な快・不快と公共的な善悪が「ムカツク」の一語で表現されており、社会的に幼稚なレベルでの拒否反応が多いのが特徴である。
問題点
@
自分と気の合う仲間とだけ交流して、「ムカツク」人間とは関わらない構えができてしまう。プライバシー、個人的空間が優先され、組織的な問題への関わり方も弱くなる。
A
クリエイティブな関係が形成されにくくなる。「ムカツク」の頻度が高いと、とめどなく愚痴が多くなり、ネガティブな気分に浸ってしまう。「ムカツク」という負の感情で結ばれる関係は、互いの低さを許容し合う、あるいは互いに低め合う関係にしかならない。
B
言葉を実際の身体感覚とはなれて使うのに慣れてしまう。自分の感情を表現するためには、自分の感覚にぴったりくるような言葉を選ばなければならない。嫌悪感の全てをムカツクで表現すると感情の多くの部分が埋め尽くされてしまう。
プライベートな領域の拡大
「ムカツク」というのは、私的な領域を侵害されたときに、とくに起こる反応で、義憤の感覚は無い。ムカツクが頻繁に使われているということは、私的な世界が、こころを大きくしめてしまうようになっているということだ。自分の部屋で過ごす快適さをキープするために、ウォークマンや携帯電話やポケットゲーム機器は強力な道具になる。
参考文献
斉藤孝 (1999) 『子どもたちはなぜキレるのか』、 ちくま新書
春日武彦 (2002) 『17歳という病―その鬱屈と精神病理』、 文春新書