児童虐待 続編
児童虐待防止法の問題点
1.
民法(第822条)と児童福祉法(第47条)では懲戒権が認められている。
2.
第3条に「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない」と明記してあるが、加害者を保護者(実の親、養父母、児童福祉施設長、未成年後見人、親戚)のみに限定されている。兄弟姉妹や学校の教師、親の交際相手、知人、近所の人などは含まれない。
3.
虐待は親告罪である。被害届けとは別に、告訴という手続きをしなければ加害者は刑事責任を問われない。
児童相談所の問題点
1.
児童相談所は全国に184ヶ所ある。東京などの大都市には多く設置されているが県によっては1ヶ所しかないところもある。
2.
厚生労働省は人口6万8千人に児童福祉司1人を配置基準としているが、基準を満たす自治体は4割にとどまっている。(2004年5月)
3.
児童相談所の職員は、全員が児童福祉司や心理判定員ではない。行政的な人事異動で全くの素人が配置されることも少なくない。
4.
職員は3年程度で転勤になることが多い。1人の担当者が、長期にわたって特定の家庭を見ていくことができない。
5.
2002年度に全国の児童相談所が行った立ち入り調査は230件で、20府県でゼロだった。積極派と慎重派で、県によってばらつきがある。大阪府は、全国で最も虐待の相談件数(2509件)が多いのに1度も調査していなかった。
虐待死事件
2003年は41件、うち8件は児童相談所が虐待の事実や疑いを事前に把握していた。8件のうち少なくとも5件は、児童相談所などが速やかに子どもを保護していれば助かった可能性が高い。
また児童虐待防止法施行(2000年)から2003年6月までに127人の虐待死事件が確認され、6歳未満の子どもが約9割を占めた。全体の約7割は児童相談所や保健所、学校などが未然に防ぐ機会があった。
<児童虐待>教職員の4割、通告義務の拡大「知らない」
04年の児童虐待防止法改正で、虐待の確証はなくても疑いがあれば関係機関に通告するよう求めた通告義務の拡大について、公立小中学校の4割近い教職員が「知らない」と回答したことが、文部科学省の調査研究会議(座長・玉井邦夫山梨大助教授)の調査で分かった。同会議は29日に公表した報告書で「通告への意識は全体的に十分とは言いがたい」と改善を求めている。
調査は昨年6〜8月、公私立幼稚園計700園、公立小中学校計1673校を対象に書面で行い、回収率は平均約76%。教職員の回答者は幼稚園約1700人、小中学校約1万7000人。
通告義務の拡大を「知らない」と回答した教職員は、公立小35.5%、公立中39.5%だった。公立幼稚園は30.9%で、私立幼稚園も31.1%に上った。
また、回答した幼稚園、小中学校のうち02年4月から昨年7月までの間、幼稚園の2割、小学校の35.2%、中学校の27.6%で虐待事例(計922件)があった。このうち児童相談所や福祉事務所などに通告・連絡・相談しなかったケースが21.5%あった。理由として「虐待の判断に自信がなかった」との回答が目立ち、報告書は「虐待を判断するのは学校ではなく通告された方。ためらうことなく通告すべきだ」と指摘している。
文科省は今年度、早期発見・早期対応につながる教職員向けの研修プログラムを作成する方針。
【長尾真輔】 (毎日新聞) - 5月29日22時5分更新
来るバックラッシュ
アメリカでは1980年代に入ってから、虐待の被害者が結束し被害の実情を語りだした。その一方でFMS(False
Memory Syndrome)基金やVOCAL(Victim of Child Abuse
Laws)などの加害者を擁護する団体が登場した。これらの団体は、被害者の訴えを「『過誤記憶症候群』である」「幼い子どもの発言は信用できない。調査員の誘導尋問によって起きてもいない虐待を認めてしまっている。」と攻撃している。
しかしながらアメリカでは2〜7%の虚偽の訴えがある。
参考文献
吉田タカコ (2001) 『子どもと性被害』、 集英社新書
発行者 瀬谷肇 編集者 福田和郎 (2005) 『朝日キーワード』、 朝日新聞社
参考URL
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060529-00000129-mai-soci