子の可愛さは真なりけり 〜児童虐待〜                                          

 

身体的虐待

 欠損家庭(貧困、地域からの孤立、親の欠損、施設に入れたことによる親子の絆の断裂、等)では児童虐待が起こりやすい。また、子どもが幼く力関係が圧倒的に親に有利な場合は、虐待は助長される。

 

性的虐待

 家庭内で近親姦が起こるときは、両親の年齢が大きな意味を持つ。父親のほうは初老期に達し、うら若い少女との交渉により自分の男性としての若さ、逞しさを確かめたいと望んでいる。一方、更年期の母親の方は長年生活をともにした父親にすでに失望しきっている。抑うつ的で心身の故障が出ていることも多く、仕事や社交など家庭の外に不満のはけ口を求めている。

 

ネグレクト(neglect)―保護の怠慢・拒否

 捨て子、衣食住や医療や教育など子どもに必要な世話をしないことをいう。意志が弱く、知的にもあまり高くなく、成りゆきまかせの両親が次々と子どもを産むと、子どもの福祉や健康の面でさまざまな問題が発生する。

 

虐待と非行

 青年期の不適応(攻撃性、非行)は、経験した「体罰」の量とは関係しない。ただし「関心の欠如」「非一貫性」は非行の原因となる。

 近年の日本では、非行少年でも大半の子どもは親から体罰を受けていない。「体罰は悪」が流布したこともあって、口下手な親などは、叱る言葉に窮して立ち往生している。非行を犯したときに、なぜその行為がいけないのかを説明することもなく、叱ることもせず、かばうこともなく、面倒になって無視している。

 

虐待の後遺症

ストレスを受けると海馬が緊急ホルモンを出してそれに対処する。しかし、体罰等の強いストレスを受けると緊急ホルモンの出しっ放しという状態を作り、安全装置である海馬に過剰な負担をかける。その結果、ニューロンを傷つけて海馬全体を萎縮させてしまう。慢性的なストレスに長期間さらされている場合は、海馬のニューロンは永久的に失われてしまう。

 

児童相談所における児童虐待に関する相談処理件数の推移

H2

H3

H4

H5

H6

H7

H8

H9

H10

H11

H12

H13

H14

1,101

1,171

1,372

1,611

1,961

2,722

4,102

5,352

6,932

11,631

17,725

23,274

23,738

※虐待防止法の公布は平成125

※警察庁が少年相談として受理した件数は1276件、加害者が検挙された事件は157件(平成14年)

※アメリカの虐待件数は88万件、通報件数は200万件(平成12年)

 

児童相談所における児童虐待の内容別相談件数

 

総数

身体的暴行

保護の怠慢
ないし拒否

性的暴行

心理的虐待

平成10年度

6,932

3,673

2,213

396

650

平成11年度

11,631

5,973

3,441

590

1,627

 

被虐待児童の年齢構成

 

総数

0〜3未満

3〜学齢前児童

小学生

中学生

高校生・その他

H10

(100%)
6,932

(17.8%)
1,235

(26.9%)
1,867

(36.9%)
2,537

(13,4%)
930

(5.2%)
363

H11

(100%)
11,631

(20.6%)
2,393

(29.0%)
3,370

(34.5%)
4,021

(10.9%)
1,266

(5.0%)
581

 

参考文献

藤川洋子 『少年犯罪の深層』 2005、 ちくま新書

池田由子 『児童虐待』 1987、 中公新書

 

参考URL

http://www2.famille.ne.jp/~onishi/statics/statics.htm