加害者の被害者意識と責任転嫁

 

全日空機ハイジャック事件

 19997月、全日空機61便が羽田空港を離陸した直後、西沢裕司(当時28歳)にハイジャックされた。機長は刺殺された。

 西沢は逮捕後、「凶器を持ち込めるような甘い警備体制が悪い」といい、機長を殺害した理由については「機長の心に『疲れていませんか』と問い掛けたら、『疲れている』と答えたので、楽にしてあげた」と供述した。ちなみに精神鑑定では責任能力があると認められた。

 

西鉄バスジャック事件

20005月、乗客22人を乗せた福岡・天神行きの高速バスが当時17歳の高校生にバスジャックされ、乗客1人が刺殺され、5人が負傷した。

少年は、犯行理由について、「自分は頭がよいのに塾へ行かされ、自尊心を傷つけられた。事件を起こして親を苦しめたかった。」と供述した。

 

 

児童虐待

 子どもを虐待した親に虐待の理由を聞くと、「叱ったところわざと目を逸らした」「一歳過ぎから反抗的になって自分を馬鹿にした」「叱っても叱っても粗相した」「わざと寝小便をして困らせた」等と答える親が多い。

 子どもを、自分を困らせたり、挑発したりする「加害者」としてとらえ、被害者意識を持っている。

 

 

性犯罪

 強姦・セクハラなどの性犯罪で検挙される者の中にも、開き直る、責任を転嫁するものが多い。逮捕後、様々な言い訳をする。

「その気にさせた女が悪い」「隙を見せた女の責任」「女にもいろいろと問題があった」「同意のうえだった」「了解していると思った」等々。

 

参考文献

岡崎博之 (2006) 『殺人心理学入門』、 宝島社

池田由子 (2001) 『児童虐待』、 中公新書

金子雅臣 (2006) 『壊れる男たち』、岩波新書