誇大自己症候群 第1回
誇大自己症候群の特徴
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万能感
自分にできないことはないと信じること。現実に対する認識が甘く、自分の能力を過信する。
A
自己顕示性
絶えず注目と賞賛を欲しがる。それがないと自分の存在感も価値も味わえず、ひどくつまらないと感じる。
B
唯一性
この自分こそが、世界の中心であり、唯一絶対のものだと思い込む。
C
共感性の欠如
他者に対する共感性が未発達であったり、失われていたりすること。
D
所有と支配
人間関係において、相手を自分の思い通りにしようとする。自分の意向に従わせようとする。
E
ファンタジー優位と解離的構造
自分が支配できる対象や理想化した対象に対しては、過度な感傷や感情移入が見られる一方で、思い通りにならない現実の他者に対しては、本当の親しみや共感をもちにくい。
F
傷つきやすさと回避・攻撃
誇大自己症候群の人がもつ万能感は、現実の万能の力に裏打ちされたものではなく、無能力や自信のなさを反映したものである。そのため傷つきやすい肥大化したプライドと、傷つきを避けるための回避的傾向を示す。回避さえ脅かされると今度は激しい攻撃性をみせる。また些細な失敗や挫折から、あっけなく自殺してしまうこともある。
G
破壊性
誇大自己症候群の人は自らの万能感が傷つけられることが許せない。そのため万能感を誇示するために破壊行動をとる。
なぜ誇大自己症候群になるのか
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溺愛と愛情不足
幼い頃に溺愛されることで万能感を肥大させ、その後、愛情不足になると、強く傷つき、それを補おうとして、さらに誇大で非現実的な万能感を膨らましていく。
親が子どもに対して過保護になると、子どもの誇大自己が現実サイズに縮まることなく、大人になってしまう。
A
子どもにとって「良い親」
子どもにとって親には、自分の思いを汲み取って、常に満足を与えてくれる「良い親」と、自分の非を咎め、思い通りにならない「悪い親」のふたつの顔がある。その両方を経験する中で、子どもは次第に自分と他者の違いに目覚め、世話をしてくれる方の都合や苦労にも目がゆくようになる。
叱らない、子どもにとって「良い親」の顔だけを見せていると、誇大自己を肥大させてしまう。
B
父親がいない
父親というのは、子どもにとっては、自分を小さく感じさせる、強力すぎるライバルである。確かな父親の存在は誇大自己の万能感の肥大を阻止する。
参考文献
『誇大自己症候群』 著者 岡田尊司 2005年 筑摩書房