テレビやゲームの影響                                                        

 

テレビ
実験的研究 (バンデューラ)

 大人が等身大のプラスチック人形を殴ったり蹴ったりする様子(攻撃モデル)を幼稚園児に見せ、その後、遊んでいる子どもたちからおもちゃを取り上げて欲求不満状態に置き、行動を観察した。攻撃反応の総量は以下のようなものになった。

@モデルなし・・・60 A非攻撃モデル・・・40 Bなまのモデル・・・80 C録画のモデル・・・90 Dアニメ・モデル・・・100

暴力映像の子どもに対する影響力を示唆している。

 

発達的追跡研究 (ヒュードマン)

 同じ対象者について、9歳、19歳、30歳の時点で攻撃性とTV番組嗜好を調べた。攻撃性は自己評定と他者評定である。9歳時に攻撃的であった少年は19歳時にも攻撃的な傾向があり、9歳の時にTVの暴力場面を好んで見た少年が19歳の時点で攻撃的になりやすいという結果が出た。

 

TVの普及と犯罪発生率 (ウィリアムス)

 それまでTVが映らなかった地域に新しくTVが導入されたとき、その前後で犯罪発生率に変化があるかどうかを比較した。アメリカ、カナダ、南アフリカなどの諸国で殺人事件の発生率は、どの地域においても約2倍増加した。

 規模、社会構造、地理的条件などが類似した3つの町を対象に選んで、子どもの身体的、言語的攻撃性を測定した。ある町の子どもたちは他の二つの町よりも顕著に攻撃性が低かったが、これは3つの町のうち唯一TVが見られない地域だった。その町にもTVが導入されたので、その2年後に再度調査を行なったところ、子どもたちの攻撃性は高くなっており、他の二つの町との違いが無くなってしまった。

 

暴力シーンを見ると攻撃的になるか (福島 章)

 青少年の暴力に関する調査研究を実施した時によると、学校の教師に対して「暴力を振るったことがある子ども」あるいは「暴力を振るうことを考えたことがある子ども」は、毎日のテレビ視聴時間が、「暴力を考えたことのない子ども」よりも著しく長かった。しかも、暴力を考えたり実行したりした子どもの中には、「暴力を振るうものを英雄化し賛美するような番組が好きだ」と答えた子どもが大勢いた。

 

暴力映像による衝動的攻撃の促進メカニズム (バーコビッツ、アンダーソン)

 まず、人の心の中で、概念、記憶、感情、反応傾向などが連合的に結合されてネットワークを形成していると仮定する。心的ネットワーク内のある要素に注意が向けられてそれが活性化すると、連合している近辺の要素にも活性化が伝搬する。その結果、人の認知や行動はこれらによって影響されて一定方向に歪みが生じやすくなる(プラミング)。

 このモデルによると、暴力映像を見ている人の中には、攻撃的な感情や概念が活性化されると考えられる。このことは実験的研究において確認されている。

 

ゲーム

実験的研究

 暴力的なTVゲームで遊んだ女子大学生が、別の学生に対して電気ショックを投与するよう実験者から依頼されたとき、対照群よりも長い時間電気ショックのボタンを押し続けたことを見出している。

 大学生を3群にわき、第1のグループにはヴァーチャル・リアリティを使った暴力的TVゲームで遊ばせ、第2のグループにはその様子を観察させた。第三のグループには何もさせなかった。実験前後の心拍を比較したところ第1のグループに最も高い覚醒が生じていた。また、このグループの被験者はその後の自由連想課題において攻撃的な概念を最も多く報告した。しかし、暴力映像に比べると暴力的ゲームに関する研究はまだまだ少ない。

 

 

『攻撃と暴力 なぜ人は傷つけるのか』  著者 大渕憲一 2000年 丸善ライブラリー

『子どもの脳が危ない』  著者 福島 章 2000年 PHP研究所