犯罪心理学 第3回
防止
@地域環境
1 地方都市などで人口が急増した場合、新しく流入してきた住民は、家族構成や職業などがバラバラであり、従来の地域社会のつながりを期待できず、犯罪の抑止力が弱い。
2 まず、ゴミの無秩序な投棄や落書き、公園の器物損壊などの問題行動が起き、続いて違法駐車や自転車泥棒、そして空き巣などの軽微な犯罪が発生する。
3 初期段階の問題行動や軽微な犯罪が放置されると、地域のイメージが悪化し、住民の移動・転居を早める。その結果、住民同士のまとまりや統制はさらに弱まり、犯罪の増加を招く。
A経済・社会の変動期
文化や価値観の変動期に、その変化に対して生半可な先進志向や中途半端な知識で対応すると、職業犯罪の餌食となりやすい。また各種保険制度や年金制度など、多くの制度改革の狭間も、プロ犯罪の温床である。
B助けるか、助けないか
異常事態に対して人が援助や介入を行なう際に、以下の各段階を経過する。
1.
異常事態に気付く
2.
その異常事態は援助されるべきかどうかを解釈する
3.
その異常事態に介入し、援助すべき「責任者」を確定する
4.
責任者を自分と考えて、とるべき援助・介入手段を整理・選択する
5.
援助や介入を実行する
C被害者への適切な対応
最近は警察や裁判でも、被害者への配慮を重視するようになったが、まだ十分ではない。また周囲の人々が、被害者に配慮同情するとは限らない。性的犯罪などでは、被害を公表すると他の人々の好奇の目にさらされることで、「二重の被害」に遭う。それを恐れる気持ちが被害の通告を抑え、犯罪を潜在化させて、新たな被害者を作る。
矯正
矯正の原則は反法的な態度形成に対応した個別の対応である。
@反法的集団の価値観を学習した者の場合
反法的集団からの隔離が必要である。刑務所や少年院に隔離するだけでなく、帰るべき反法的集団を排除、あるいはそうした集団との関係を断ち切り、かつ順法的な価値観を持たせる必要がある。
A所属集団の(順法的な)価値観に反発した者の場合
本人を取り巻く人々が持つ規範への考え方と、本人の規範への考え方とのずれを調整する必要がある。ただし、この調整は、当事者以外の人でなければできない場合がある。
B混濁した価値基準を取り入れた者の場合
常に一貫した順法的価値基準を持たせることが必要である。そのために、反法的な行動は強力に統制し、一方で順法的な行動は強く承認することで、順法的な態度や行動を遂行することに意義や充足感を学ばせる。
C規範に硬直的な適応をしていた者の場合
従おうとする基準が狭く、対応が硬直化しているために帰って犯罪を引き起こしたのだから、生き方や考え方の柔軟性や周囲との協調性を学ばせる必要がある。
うそ発見器
脈拍や発汗、筋肉運動などの生理的指標から犯人のうそを見破るうそ発見器、認知心理学の進展やコンピュータ処理技術の進歩により、近年、再評価され、一定の証拠能力があるとされている。
プロファイリング
様々な行動科学の知見を活用して、犯人像や犯人の行動に関する情報を提供し、捜査を支援するもの。個別の事例を綿密に探ることで行為者の内面に迫る「事例研究」と、多数の客観的データを処理して行為者の行動傾向を明らかにする「数量的研究」がある。前者を「FBI方式」、後者を「リバプール方式」という。
目撃者の証言
一般の予想以上に不正確である。刺激の強さ、知覚者の欲求や興味、価値観などによって、対象のある面を選んで知覚したり、逆に排除したりするためである。さらに記憶を再生する際、尋問の仕方によって歪められることがある。
陪審制度をとるアメリカでは、証言者の属性や証言者に対する好意度などに影響されやすい。
『図解雑学 犯罪心理学』 著者 細江達郎 2002年 ナツメ社