犯罪心理学 第2                                                                    

 

T発達成長と非行・犯罪

@「エディプス・コンプレックス」 (S.フロイト オーストリア 精神医学者)

 異性の親を求め、同性の親と対抗する幼児期の心理状態。これを解決することで、衝動的な「本能」に対抗する「超自我」を形成できる。解決に失敗すると、超自我を形成することができず、「本能」の持つ攻撃性や性的衝動を抑制できなくなる。

 

A道徳性と犯罪行動の学習  (バンデューラ カナダ 社会心理学者)

 子供は報酬を受ける行動は繰り返しとり、罰を受ける行動は繰り返さない。しかし、他の子供が禁止された行動をとって、逆に報酬を受け取っているのを見ると、禁止行動が助長されることが分かった。

 道徳判断は年齢に応じて誰でも同じように発達するのではなく、自分で経験したり、他人を観察したりすることで道徳性、あるいは逆の犯罪行動を学習すると考えられる。

 

B非行深度

第一段階

 家族などの保護領域のあり方が、少年の行動に直接的に影響を与えるのが特徴である。保護領域の統制力が非常に強く、それに少年がうまく適応できない場合、生活領域の狭い少年は逃げ場を失う。その結果、両親への反抗や突発的な家出などが暴発する。家族や学校などの目の届く範囲の中で、つまり子供にとって「勝手知ったる」範囲内で非行をする。

第二段階

 明確な違法性を認識しないままに、遊び的生活に伴って、万引き、オートバイの使用窃盗・暴走行為、薬物乱用などが発生する。また、非行が集団化し、家庭や学校の統制に反発・無視する。被害の通報を簡単にしない第一段階の非行者を「被害者」にすること(被害の連鎖)も多い。

第三段階

 前段階までの「遊び型」非行少年は、以降の段階へ深化することは少ない。しかし、非行を単なる遊びと見なせない者の中に、転職を繰り返す生活を通して、反社会集団の末端に地位を得る者が、少数ではあるが発生する。当初は単なる欲求不満の解消だった週末の遊びが、徐々に生活や自我の中核を占め、それに伴って労働意欲を失い、遊びとそれを支える犯罪に生活の中心が移行することになる。

第四段階

 自分がプロ犯罪者であるとの自覚と、明確な集団所属性を持つだけでなく、その中心的な位置を占め、見習い犯罪者を抱える。自ら手を下して実際の犯罪をすることはまれとなる。この段階での犯罪の抑制は、警察などの公的な統制力によってのみ可能である。

ふきだまり層

 最も悲劇的な段階。一般の職業社会に適応できず、家族などの保護的社会にも戻れず、犯罪社会からは排除されず、食い物にされている。

 

様々な犯罪

@殺人

 日本では殺人の検挙率が高く、死刑を含めた重罰が科せられるため、計画的殺人よりも激情にかられて行なわれる殺人が多い。激情型の殺人よりも、意図的・計画的な殺人の方が犯行深度も深く、最も重大性を持つ。

暴力犯罪

1 衝動的攻撃行動

 相手に対する不快感情が冷静な判断を妨害すると、人は衝動的な攻撃行動をとる。犯罪のレベルとしては、初歩的である。

2 戦略的攻撃

 計画的に熟慮された戦略的攻撃行動は、被害者に大きなダメージを与える確率が高く、犯罪者としての問題も大きい。

A性犯罪

 暴力的な性犯罪の場合、加害者の威嚇や被害者の羞恥心による犯罪の潜在化、男性の「レイプ神話」、顔見知りによる犯行の問題など、レイプ犯罪は様々な特有の問題性を抱える。

 覗きや露出(公然わいせつ)、下着泥棒などは、性の正当な対象を選ぶことができない加害者が、代償的な性的満足を求めて行なう犯罪である。しかしその繰り返しが、重大な犯罪に深化することもある。

B暴走族

 一般には「道徳秩序を乱す無法者」や「追放されるべき悪」とされ、学歴社会からの落ちこぼれ・欲求不満者である否定的な人物として描かれる。一方で「若者のエネルギーの自然な発露」とみなされ、男らしさや硬派、または危険への挑戦への礼賛されることもある。この二面性が大きな特徴である。

C放火

 不満の発散としての放火、怨恨による方か、利益目的の放火など、動機は様々だが、被害者と直接渡り合わずに実行できる「弱者の犯罪」という共通の特徴がある。不満の発散としての方かは連続して発生することが多いが、対象を絞った放火は単独で発生する。

D薬物犯罪

 最初は「一回ぐらいなら」という興味で薬物を使用する。薬物犯罪が深化すると、薬物の常用者になる被害者型と、薬物の密売に手を染める加害者型に分かれる。

 薬物使用者は、心理的・身体的な不全感を持ち、内向的で意思が弱く、自己否定感や他人への依存・同調傾向が強いタイプとされる。

 

『図解雑学 犯罪心理学』 著者 細江達郎 2002年 ナツメ社