少年法について
現行少年法の骨格
昭和24年1月に施行された。新たに施行された日本国憲法に基本的人権の尊重と明記されていたため、少年の自由を拘束する強制処分を含んだ保護処分を行政機関で行なうことは適当でないと考えられた。しかし、その当時、戦後の混乱ですでに少年犯罪が激増していたため、刑事政策的見地も無視することはできず、少年に刑罰を科す余地も残された。
現行少年法の主な改正点
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家庭裁判所を設置し保護処分の種類を整理して、保護観察、児童自立支援施設または養護施設送致、少年院送致の三種類とした
A
それまで少年の処理を検察官が先に判断していたのを変更し、家庭裁判所に全件送致することになった。
B
少年法の適用年齢を18歳未満から20歳未満へ引き上げた。
C
刑事処分に値する16歳以上の少年への、死刑と無期刑の言い渡し制限を、犯行時16歳未満から18歳未満に引き上げた。
D
裁判所が保護処分の決定をした後の執行を、行政機関に一任することになった。
E
少年の福祉を害する成人の刑事事件についても家庭裁判所の管轄とした。
F
保護処分に対し少年の高等裁判所への控訴を認めた。
14歳未満の者の処遇については、少年法と同時に施行された児童福祉法により、全児童を対象とした健全育成・福祉政策の中に包含され、少年教護院は教護院と名称を改められて、児童福祉施設の一つに位置づけられるようになった。現在は児童自立支援施設となっている。
少年法改正
2000年11月、少年法改正法案が成立した。2001年4月から施行されている。
T. 最近の少年犯罪の動向などにかんがみ、少年およびその保護者に対し、その責任について、一層の自覚を促すため。
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刑事処分を可能とする年齢を14歳に引き下げる。
A
故意の犯罪によって人命を奪った16歳以上は原則逆送にする。
B
必要な場合は保護者に訓戒、指導など適切な措置をとることができる。
U. 少年審判における事実認定手続きの一層の適正化を図るため
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検察官と付添人が関与した審理を導入する。
A
裁定合議制(三人の裁判官が担当する制度)を導入する。
V. 被害者に対する配慮を実現するため、記録の閲覧や意見聴取等の制度を導入する。
W. 再審制度の拡充等を図る。
厳罰化と検察官関与の拡大は現行少年法誕生以来、たびたび議論されたが、初の大改正となった。
少年法改正の疑問
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少年法の第一条に「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する処分を行なう」とある。「原則逆送」は、「健全を期す」という少年法の理念からはずれる考えではないか。
A
14歳は義務教育期間中であり、この年代の子供たちに刑罰を科してよいか、刑事裁判に付してもよいのか。
B
刑罰化で本当に犯罪は防止できるのか、再犯を防げるのか。
C
刑事処分の数が少ないという事実を挙げて家庭裁判所の処分が甘いという強調も、なぜ少ないのか。
不十分な統計と議論
野党議員「一定の効果を期待して法律改正するのであれば、根拠となるデータはあるのか」
法務大臣「まあ、データと言いますが、・・・そういうものを何か・・・、総合的、体系的なしっかりした
調査の結果、何をやればどういう効果がある、というデータは無い。」
野党が審議を拒否する異常事態の中で、与党の思うままに審議が進んで、途中から野党が審
議に参加しても、指摘された問題点に関する誠実な対応は無かった。衆議院法務委員会で実質
七日間、参議院法務委員会で実質六日間にわたる審議をしたにすぎず、関係参考人についても
形式的に意見を聞いただけである。「厳罰ありき拙速審議」(『東京新聞』見出し)で法律は可決さ
れてしまった。
参考文献
『少年犯罪‐統計からみたその実像‐』 著者 前田雅英 2000年 東京大学出版会
『少年犯罪と向き合う』 著者 石井小夜子 2003年 岩波新書