犯罪少年たちの処分                                            

 

少年犯罪の数

1998年に刑法犯を犯したとして検挙された成人は、成人人口10万人あたり167.5人にすぎないが、少年はその10倍を超えているのである。年少少年(1415歳)が220人、中間少年(1617歳)が203人に達している。中高校生の50人に一人は警察に検挙されているのである(不良行為で補導されるのはさらにその数倍となる)。

 

 犯罪少年・触法少年・虞犯少年は、家庭裁判所に送致される。通常の刑事裁判とは異なり、少年の保護を原則とするため、通常の裁判所ではなく家庭裁判所で審判に付される。ただし重大な犯罪行為で、刑事処分をすることが相当と家裁が判断した場合には、検察に送致(逆送)され、検察官により起訴される可能性が出てくる。

 98年の家裁の処理状況を見ると、全少年214304人のうち、審判をそもそも開始しないものが約12万人、審判したが処分をしないものは約35千人。家裁に送られても処分不開始、不処分になる少年が4分の3を占める。

 処分者の内訳は、施設に収容されない保護観察が約25千人、少年院送致が5千人、児童自立援護施設が約3百人、刑事処分は約1千人。

 

@     少年鑑別所

    本人あるいは環境に問題の多い少年の身柄を少年鑑別所に収容して調査・審判の円滑な遂行を確保し、その間の非行性の深化等を防止するとともに、社会調査・行動観察・心身鑑別を行なって、適正な審判の実施を図るものである。

 

A     保護観察

少年を施設に収容せず、家庭や職場等においたまま、指導監督・補導援護を加えてその改善更生を図る制度で、社会内処遇の主要なものである。内容は遵守項目を定め、これを守るように指導監督することである。その項目は@一定の住居に居住し、正業に従事すること、A善行保持、B犯罪性のある者・素行不良者と交際しないこと、C転居・長期旅行にはあらかじめ許可を求めることがある。期間は、少年が20歳になるまでが原則であるが、決定から二年に満たないときは、成人後も含め二年間となる。期間中でも成績良好等で保護観察の必要が無いと認められれば、停止解除ができる。

 

B     少年院送致

    少年院とは、法務省の少年矯正教育施設で、初等、中等、特別、医療の4種類がある。内容は健全な生活習慣の育成、生活リズムの回復、学習・勤労習慣の育成、教科教育の補習、職業教育・資格取得などの教育が行なわれる。収容期間は、原則として2年以内とされ、おおむね1年程度を目処とした処遇計画が編成されることが多い。本人が20歳に達するまでが原則であるが、送致決定時に19歳を超えている場合は、送致時から一年間となる。また特別少年院については23歳まで、医療少年院では26歳まで一定の事由が在れば収容できる。

 

C     児童自立支援施設送致

    不良行為をなし、またはなすおそれのある児童等を入所させ、または保護者の下から通所させて、必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設である。対象者は中学生を中心とする義務教育中の者が大半を占めている。

 

D     刑事処分

    少年が刑事処分を科されるのは、16歳以上で、懲役・禁錮以上の重大な罪を犯した場合に、しかも家裁が刑事処分相当と判断した場合に限られる。少年刑務所には、少年受刑者の他26歳未満の青年受刑者をも収容しおり、少年受刑者が少ないため、大多数は青年受刑者になっている。

 

殺人罪

90年〜99年の間の殺人事件数は、成人の場合10万人あたり1.11.3人の間を上下していた。少年の場合、90年に0.6人だったが、年々増加し、96年に1.099年には成人を上回った。

 

強盗罪

 強盗を犯す少年の主役は、90年以降は年長少年から中間少年に完全に入れ替わる。そして年少少年と年長少年との差が小さくなってきた。

 

恐喝罪・傷害罪

 凶悪犯のみならず、暴行・傷害・恐喝・脅迫などの粗暴犯も、平成に入り少年犯罪が急増した。検挙人員率は、傷害が1.5倍に、恐喝は2倍以上にそれぞれ増加した。

 

参考文献

『少年犯罪‐統計からみたその実像‐』  著者 前田雅英  2000年  東京大学出版会