死刑について 第2

 

東京拘置所

7大拘置所(東京・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡)のひとつであり、東京矯正管区にある27の拘置施設のひとつである。現在施設老朽化と収容人数の激増から改築が薦められており地上12階地下2階の高層ビル形式の拘置所となっている。改築された拘置所は建物自体に脱走対策が採られており、改築終了後は壁も撤去される予定である。葛飾区立西小菅小学校に隣接している。

現在の収容人数は2163名である。2006年には収容人数3,000名となり、現在の府中刑務所(定員2,598名)を抜き最大の収容人数を誇る拘禁施設となる。死刑囚収監数34名は全国最多。

死刑確定囚は、既決囚だが、受ける刑の執行は絞首台だけで、労働を課せられる懲役刑ではない。そのため、未決の囚人と一緒に拘置所に入れられる。そして、原則的には、刑が確定してから6ヵ月以内、法務大臣が判を押せば、それから5日以内に執行しなければならない。

しかし、現実には、必ずしも6ヵ月以内に死刑執行は、行なわれていない。その理由の一つに、再審請求や恩赦請求が提出されているその審理の期間中の日数は通算されないというものがある。それらのものが却下されてから、また次の再審請求などを出すまでの間の日数を算入して、それが六ヶ月に達したら、初めて死刑執行をするのだという説もある。しかし、度重なる再審請求の間の日数が、六ヶ月に達していなくても死刑執行された例は、いくらもある。定説は無く、法務大臣の思想とそれを取り巻く情勢如何ということになる。現実に、明治以来死刑確定囚の再審が受理されて、判決が訂正された例はわずかである。

 

死刑囚の一日の時間は、午前6時20分に起床、点検を終わって6時50分朝食、11時半から50分昼食、午後4時半から夕食、6時就寝と決まっている。死刑囚も金があれば所内の売店か、指定の差し入れ屋で食料が買えるが、多くは貧困で、金が無いため、拘置所配給の食事に頼らなければならない。こういう死刑囚は、所長に申請して、アルバイトを世話してもらう。封筒張りなどがもっぱらおこなわれている。金のある死刑囚は、背広でも和服でも立派なものを買って着られるが、ない者は官給囚人服で過ごしている。

 

そして死刑執行の呼び出しは、土・日を除いて毎日午前九時に行なわれる。

刑場は地下1階にある。刑場への出入り口となる廊下からのドアは、他の扉と同じであり、死刑確定囚がそこに入っても、刑場とは理解できないのではないかと思われる。その廊下から通じるドアを開けて中にはいると、仏壇が設置されたエリアがある。ここで遺言書を書き、遺体及び遺留金の処分について質問される。そのエリアからは、アコーディオンカーテンで区切られている。
 アコーディオンカーテンを開けると、そこが刑場である。死刑囚は顔に白布をかけて、手錠を施されてそこに入る。薄紫色のカーペットが敷かれた刑場(810畳程度)には真ん中に110cm四方程度の四角い赤枠(落とし板)があり更にその中に小さな枠がある。天井には縄を掛けるフックがあり、誘導されて、落とし板の上に立たされた死刑囚は両足の膝を布で縛られ、首に縄をかけられる。首と縄の間に隙間がないように密着させて、それを確認した保安課長がボタンを押す。落とし板は油圧で開く仕組みになっており死刑囚は約4m下に落下して絞首される仕組みになっている。

落下する部屋はコンクリート敷きの床である。待機している2人の執行人苦しみもがく死刑囚の身体の揺れを止めて、降りてくる立会人の方角に向ける。ちょうど死刑囚が落ちてくる部分は、四角形の穴がありネットで覆ってある。死刑囚の遺体などを洗浄したときの水を流すためだ。職員は、死刑囚の顔から白布を取り除き、医師は脈拍を測る。次に聴診器で心臓の鼓動を測る。止まると死亡とされ、五分後に縄をとき、検死して、死刑執行は終わる。
 刑場は隣の部屋からガラス越しにて検証できるようになっている。このガラス越しの部屋は検察官や拘置所長らが死刑執行に立ち会う場所となる。この場所からは刑場の全貌が見えるとともに、執行後地階に落下した死刑囚の執行後の姿が確認できる。死刑執行を実行する刑務官の執行場所からは死刑囚の執行現場は確認できない場所にあるのではないかと推察される。

 

執行後遺族に知らせるが、死刑囚ともなると、遺体引き取りに来るものは極めて少ない。たいていは火葬にして骨にして送り返す。それを知っているためか、囚人自身の希望により、大学病院に寄附して、解剖に附すのもある。

拘置所職員たちは、誰も死刑執行の立会人や執行係にはなりたくない。僅かな執行手当てをもらうが、それも供養のために使ってしまう人が多い。前日に担当者を決めると、当日は休んでしまうため、当日の朝出勤して来た時に言い渡すようにしたところもある。

 

 

参考

『日本残酷死刑史』  森川 哲郎  平沢武彦 編  2001年 日文新書

死刑廃止と死刑存置の考察 http://www.geocities.jp/aphros67/index.html