勝手に対決 第5回 〜少年法改正〜
少年法の理念
少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行なうとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
主な改正点
T.最近の少年犯罪の動向等にかんがみ、少年およびその保護者に対し、その責任について一層の自覚を促すため。
@刑事処分を可能とする年齢を14歳に引き下げる。
A故意の犯罪によって人命を奪った16歳以上の者は原則逆送にする。
B必要な場合は保護者に訓戒、指導等適切な措置をとることができる。
(厳罰化)
U.少年審判における事実認定手続きの一層の適正化を図るため。
@検察官と付添人が関与した審理を導入する。
A裁定合議制(3人の裁判官が担当する制度)を導入する。
(検察官関与)
V.被害者に対する配慮を実現するため、記録の閲覧や意見聴取等の制度を導入する
W.再審制度の拡充等を図る。
2000年11月改正 2001年4月施行
Tに関して
改正によって14歳以上なら刑罰を科される可能性が出てきた。しかし14歳は義務教育期間中であり、この年代の子どもたちに刑罰を科してよいか、刑事裁判に付してよいのか疑問である。
一定の犯罪については原則逆送(検察送致)とあるが、これは「健全な育成を期す」という少年法の理念からはずれる考え方である。
Uに関して
少年事件の場合、「健全な育成を期す」ために、家庭裁判所の調査官や少年鑑別所が社会調査を行う。これは事件の背後にある少年の生育状況や環境等を調査し、人間諸科学を用いて個別の事情を探るものである。これをもとに家庭裁判所はその少年に相応しい処遇を決める。→原因を加害者本人に限定しない。
一方、検察官の調査というのは、表面的に事件の内容を確認し、証拠を集めるものである。これまでの少年審判では、検察官は集めた証拠を家庭裁判所に送るだけで、法廷に立つことはできなかった。送られた証拠は裁判官がチェックし、不正確なものを証拠として用いないようにしていた。しかし、改正によって検察官が法廷に立ち自らの証拠の正しさを説明できるようになった。しかも裁判官が証拠をチェックする制度的保障は設けられなかった。
参考
『少年の「罪と罰」論』 宮崎哲弥・藤井誠二 2001年 春秋社
『少年犯罪と向き合う』 石井小夜子 2001年 岩波書店
補足
刑務所の、新収容者のうちの再入者の比率は、男子では51.0%、女子では28.6%である。また、出所後、再度実刑になる割合は、翌年で22.4%、5年後では47.9%に達している。
強姦で逮捕された1,342人のうち初犯者が676人、再犯者が666人とされており、逮捕者全体に対する再犯者の割合は49.6%にも相当する。「強制わいせつ」であれば、2273人中再犯者は935人であり、41.1%である。