勝手に対決 第2回 〜『ゲーム脳の恐怖』〜                                

 

@       テレビゲームを長期間おこなっている人の脳波は痴呆者の脳波と似ている。

A       ゲームを始めると、β波が下がる。これは脳の働きが悪くなることを示している。

B       歩くほどに脳がさえる。二宮金次郎や伊能忠敬がその例。歩くことによって海馬や前頭前野の働きが活性化されたのだろう。

C       ゲームが睡眠不足の原因になっている。NHKの調査では子どもの睡眠時間が25年間で30分減っている。

D       ゲームによって前頭前野の機能が低下し羞恥心が欠如する。公衆の面前で抱き合うカップルや、電車の中でパンを食べたり、水を飲んだりしている人たちがその例である。

E       ゲームは進むテンポが早く思考が入る隙間がない。よって脳の働きが衰える。

『ゲーム脳の恐怖』 森 昭雄 生活人新書 2002

 

@に関して

同書のなかで、健常者がボーっとしている時の脳波も痴呆者の脳波と似ていると書いてある。ということはゲームをしているときは単にリラックスしているだけなのではないか。

 

Aに関して

どっちの脳波でショー?

                                         運動                    ゲーム

ゲームをしている時も運動をしている時も同様に脳波が下がっている。

 

Bに関して

 歴史上の人物を2人挙げて結論を出すのはいかがなものか。歩くことで脳が活性化するかどうかは調査をしていない。

 

Cに関して

 子どもの睡眠不足の原因をゲームだとするデータがない。

 

 

Dに関して

 ゲームと羞恥心の相関を表すデータがない。

 

Eに関して

 調査で使用されたゲームは、積み木あわせゲーム、格闘技ゲーム、ホラー要素を含むシューティングゲームの3種類だけである。

 また、10円玉立てや将棋について、「一時的に脳波は上がるがしばらくすると下がってしまう。慣れてしまったのだろう。」と書いてある。ということはゲーム脳もただの慣れということになる。

『ゲーム脳の恐怖』では、ベータ波が多いとものを考えていて、アルファ波が多いとものを考えていないと書いてあるが、これは間違っている。脳波を測定する時は、普通は目を閉じているが、目を閉じると、だいたいアルファ波優位になり、それが正常な状態である。目を開けると電位の低いベータ波が出てくる。アルファとベータの逆転は、簡単に起こる。アルファ波とベータ波は正常脳波であり、脳が異常であると言うためにはシータ波とデルタ波を計測しなければならないが、それがされていない。 

また、前頭前野の異常ということを繰り返し言っているが、前頭前野に異常があると言うためには、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の脳波も計測し、比較しなければ意味が無い。

参考URL http://www.tv−game.com/

 

「ゲーム悪影響論」の4つのピーク

第1のピーク(昭和63年前後)

人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の発売に伴って購入できた子どもが、買えなかった少年に恐喝されるといういわゆる「ドラクエ事件」をピークに、ゲームの悪影響を懸念する声が高まる。

 

第2のピーク(平成5年)

 イギリスの少年が、テレビゲームをしている最中に癲癇発作を起こして死亡したという事件をきっかけに、ゲームは身体的、心理的に悪影響を与えるのではないか、という懸念が再び高まる。

 

第3のピーク(平成9〜10年)

 神戸の小学生連続殺傷事件などの少年事件がセンセーションを巻き起こし、その原因について議論が盛んになる中で、テレビゲームの存在がクローズアップされた。

 

第4のピーク(平成14年〜現在)

『ゲーム脳の恐怖』の出版で多くの人が「ゲーム脳」の議論に触れたのをきっかけに、テレビゲーム悪影響論が注目を集める。

 

『ネット王子とケータイ姫』 香山リカ 森 健 中央公論新社 2004年