勝手に対決 第1回 〜『子どもの脳が危ない』〜
@ 少年凶悪犯罪の原因の一つに、脳にある外傷の影響がある。精神鑑定で精密検査を受けるような犯罪では、47中30人(64%)が脳になんらかの異常を示している。それを殺人とその他の犯罪に分けると以下のような所見率になる。
罪名 |
形態異常あり |
形態異常なし |
計 |
殺人 |
21 (50) |
21 (50) |
42 |
その他 |
2 (13) |
13 (87) |
15 |
計 |
23 |
34 |
57 |
脳ドッグで脳の異常が発見される確立は1%といわれているので、殺人者の有所見率は、一般人口の50倍ということになる。
A 流産予防のために使用される黄体ホルモン製剤や排卵誘発剤は女性ホルモンの一種でありながら、男性化ホルモン作用があることも知られている。そのため、女児の脳であれば男性化させ、少女期には活発で行動的なおてんば娘を作り上げるし、男の子の脳であればこれを「超男性化」して、人並みはずれた攻撃性や性欲の強い青年を生み出す。
『子どもの脳が危ない』 福島 章 PHP新書 2000年
@に関して
まずデータが少ない。大規模な統計がないと脳の損傷と犯罪に相関があるとは言えないのではないか。
仮にそういうデータあったとしても立論はできない。加害者は長期に及ぶ拘禁をされ、厳しい取調べを受けるため、鑑定を受けるまで時間がかかる。その経験が脳に異常を発現させる可能性もあるだろう。犯行時に脳波や器質的な異常があったことを証明するものではない。
この主張を実効性あるものにしようとすれば、脳に損傷のある人を予防拘禁する、あるいは日常生活を監視下におくことになる。
Aに関して
排卵誘発剤を使う人は増加しているので、この説に従えば、子どもは昔と比べて全体的に攻撃的になっていなくてはいけない。しかし補導者数が増える一方で、少年による殺人事件は、ピーク時(昭和20〜30年代)の年間400件から100件にまで減った。また、福島氏は自殺も自分自身への攻撃としているが、青年の自殺率もピーク時の3分の1ほどにまで減っている。
『少年の「罪と罰」論』 宮崎哲弥・藤井誠二 春秋社 2001年