女子少年院 第1回                                                            

 

女子少年院

 少年院は全国に53庁ある。そのうち9庁が女子少年院であり、北海道、宮城県、東京都、群馬県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県にある。鑑別所入所も少年院送致も、女子は全体の一割である。

 

男子少年院と女子少年院とは、基本的な骨格においては大きな差はないが、具体的な取り組みに、かなりの違いが見られる。

 非行内容で見ても男子は、窃盗、傷害、道路交通法違反の順に多いのに比し、女子は圧倒的に覚醒剤取締法違反が多い。次いで窃盗と虞犯が見られる。殺人などの凶悪事件の約9割は男子少年によるもので、女子では、凶悪事件は稀である。傷害事件も女子の入院者数の1割程度を占めている。

 

教育活動では、男女ともに各少年院において、生活指導、職業補導、教科教育、保健・体育、特別活動の5つの指導領域から成り立っており、生徒の資質や施設の立地条件に応じた特色のある教育活動が行われている。広い敷地のあるところでは、農作業を指導の一環として行なっている。

 

女子少年院では、性、薬物、家族といった女性特有の非行の鍵となるテーマについて、レクチャーや面接だけでなく、サイコドラマ(自分の犯行を自分で再現する、道徳的なドラマを演じる)やグループセッションにより集団活動の力を借りて、掘り下げを図る試みも盛んである。

 また、生け花、茶道、調理実習など、豊かな情操や女性らしさを養う女子施設特有の活動もある。ちなみに、少年院のイメージにありがちな軍隊式の掛け声や行進は、女子少年院では一般的に行われていない。

 

贖罪教育

 贖罪教育とは、自身の罪に目覚めさせ、被害者の痛みを感じさせ、償いの気持ちを持たせることを目的とする。それは同時に、取り返しがつかない罪の重みに目覚めさせことでもある。自我が未熟な少年の場合は、自責の念に駆られ、自虐的な行動に出る可能性が十分にある。自殺の危険性を常に考慮に入れなければならない。

 

被害者への謝罪

 院内生活の中で被害者への謝罪の気持ちが生まれたとしても、それが真に実感をともなったものかどうか、院側が完全に信用できるまでは発信されない。また、発信しようとしても被害者側に拒絶されれば届くことはない。

 

 

某女子少年院における教育内容および方法

生活指導 〜健全なものの見方・考え方及び行動の仕方の育成

       〔非行に関する指導〕

       個別面接 内省 役割交換書簡法 問題群別指導(薬物・不良交友・家族・性問題等)

       心理劇・グループ討議 社会適応訓練

       〔進路指導〕

       進路相談 応接マナー講座 体験学習 公共職業安定所見学

       〔保護者との関係調整〕

       面会・通信 役割交換書簡法

       〔安定した情緒を育てる〕

       読書指導 生命尊重教育 カウンセリング 箱庭療法

 

職業補導 〜勤労意欲の喚起 職業生活に必要な知識・技能の習得

       職業情報の供与 自己の適正把握 資格取得(ワープロ パソコン 秘書検定 販売士 

                                     調理師 簿記検定 危険物取扱者など)

 

教科教育 〜学習意欲の喚起 基礎学習の向上・強化

       義務教育教科の履修

 

特別活動 〜自主的活動 レクリエーション 行事などの実施

       集会指導 役割活動 社会見学 社会奉仕活動 自主日課編成による自主管理生活

 

保健・体育 〜健康管理及び体力の向上

        ジャギー 水泳指導

 

 

参考文献

『女子少年院』 魚住絹代 2003年 角川書店