勝手に対決 第6回 〜刑法39条〜
刑法 第7章 犯罪の不成立及び刑の減免
第39条
1心神喪失者の行為は、罰しない。
2心神耗弱者の行為は軽減する。
39条を削除すべきではない
すべての人間には自由な意思がある。ただしその自由には責任が伴う。また自由は無制限に認められているものではなく、「公共の福祉に反しない限り」という条件がつく。
罪を犯したものは法律で罰せられる。これは、犯人には「罪を犯す自由」と「罪を犯さない自由」が認められていたのに、あえて「罪を犯す自由」を選んだためである。犯罪者は自らが招いた結果に対して責任を負担しなければならない。
ところが、正常な判断能力を失っている心神喪失者には、そもそも自由な意思がなく、「罪を犯さない自由」も最初から失われている。そのためにそれを伴う責任も発生しない。
39条を削除すべきだ
民法では。行為無能者や知的障害者などの行為が大きく制限されていた。しかし、近年ノーマライゼーションの潮流の中で、社会進出を積極化している。同じことが刑法の世界においてもすべきである。
憲法(32条)には「裁判を受ける権利」が保障されている。裁判をうけることも、処罰されることも保障されるべき権利ではないだろうか。
かつて刑法40条には「イン唖者の責任能力」の規定があったが、イン唖者に対する差別だとして削除された。よって39条も精神障害者に対する差別であり、削除されるべきである。
限界
精神鑑定をしても犯行時の精神状態を探ることはできない。
補足
刑法 第7章 犯罪の不成立及び刑の減免
第39条 1心神喪失者の行為は、罰しない。
2心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
この条文は明治時代からあったというのは確かだが、どの段階で盛り込まれたかは不明。
仮刑律 |
明 1.11.撰定 |
未公布 |
施行 |
廃止 |
新律綱領 |
明 3 法令番号第944 |
明 3.12.20 |
明__.__.__ |
明15. 1.1 |
改定律例 |
明 6 太政官布告206 |
明 6. 6.13 |
明 6. 7.10 |
明15. 1.1 |
[旧]刑法 |
明13 太政官布告 36 |
明13. 7.17 |
明15. 1. 1 |
明41.10.1 |
刑法 |
明40 法 45 |
明40. 4.24 |
明41.10. 1 |
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@措置入院した精神障害者の退院後の再犯率は21.9%
A(触法精神障害者と同時期に出所した一般犯罪者との再犯率の比較)
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総数(人) |
再犯 |
再犯率(%) |
殺人 |
触法精神障害者 |
205 |
14 |
6.8 |
一般犯罪者 |
180 |
51 |
28.3 |
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放火 |
触法精神障害者 |
139 |
13 |
9.4 |
一般犯罪者 |
185 |
64 |
34.6 |
→いずれも山上皓・東京医科歯科大学教授らのデータ。不起訴処分もしくは刑の減免を受けた触法精神障害者の11年間での再犯率。「触法精神障害者946名の11年間の追跡調査(第1報)」(犯罪学雑誌61巻5号)に基づいたものである。
参考文献
盛田栄一 (2003) 『空想法律読本2』、 メディアファクトリー
呉智英 佐藤幹夫 (2004) 『刑法39条は削除せよ! 是か非か』 洋泉社