2005/07/22
中村 朋文
持ち合い株
企業同士がお互いの株式を相互に保有しあうことを「持ち合い」といい、持ち合いのために保有している株のことを「持ち合い株」と呼んでいます。企業系列の中で、互いに相手の株式を保有したり、資本の安定を目的に、友好関係にある会社同士が互いに株式を保有することです。
日本では、資本自由化で外資による会社支配の懸念が強まり、1960年代後半から急速に広まりました。取引関係にある金融機関や事業会社、グループ内企業などがお互いに株式を持ち合い、経営権の取得、グループ化、企業間取引の強化、株式の安定化をはかっていた。 しかし、国際的・国内的な批判に加えて、資本の空洞化、浮動株式の減少による株価形式の歪みなどが問題となっています。バブル崩壊による持ち合い崩れやバブル崩壊後の業績悪化で、銀行を中心に持ち合いを解消する動きが加速し、外国人の株式保有比率が急拡大しました。このため事業会社の中には、株式の相互保有や資本提携を強化したり、取引先に株式保有を依頼するなどの動きが出ています。買収への防衛策とはなるが、多数の株主による経営監視の側面からはマイナスとなります。
90年代に入り、外部よりその閉鎖性や不透明性が指摘されると同時に、実際にその非効率性も露呈してきました。これに伴い、取引関係の薄い同志を中心に、株式の売却が目立つようになってきました。金額ベースでの株式持ち合い比率(対市場全体)は1991年度の27.7%からほぼ連続して低下が続き、2003年度は8.6%にまで低下しました。業態別(銀行、事業会社、その他)にみてもすべてで持ち合い比率は低下しており、上場企業全体で株式の持ち合い関係の解消や持ち合い株式の保有削減が進んでいることがいえます。
株式の持ち合いのメリット
(1) それぞれが株主となり、かつ大量に株式を保有することで、安定株主工作が出来る為、証券市場を通じた企業買収などから企業を防衛することができ、経営の安定がはかることができた
(2) 両者の関係をもとに、実際取引そのものも長期的・安定的に行うことができた
(3) 相互に経営をチェックする、いわゆるコーポレートガバナンス(=企業統治)機能を持つことができた
銀行等保有株式取得機構は、銀行の持ち合い株を解消するための受け皿機構で、2002(平成14)年1月30日に設立し、2月中旬から買い取り業務を開始しました。銀行が保有する持ち合い株を、市場を通さずに時価で買い取り、時間をかけて市場に放出していきます。2002(平成14)年3月期の決算から、保有株式の時価評価が義務付けられました。現状のままでは、株価の下落が銀行の資産を減らし、経営状態を悪化させてしまいます。そのため、銀行は持ち合い株の売却を進めていますが、大量の持ち合い株が市場に流れると、株価下落の原因になります。そこで、銀行の持ち合い株解消の受け皿として、機構の創設が必要になりました。
石油元売り業界では新日本石油とコスモ石油が、鉄鋼業界では新日鉄、住友金属工業、神戸製鋼が資本関係強化を発表するなど、産業界において株式持ち合いを強化する動きが目立っています。
<参考URL>http://www.nomura.co.jp 野村證券