抵抗

 

雪と滑走面の間には@水の吸い付きによる抵抗、A乾燥摩擦抵抗、B静電気による抵抗、C汚れによる抵抗の四つの抵抗があり、ワックスにはこれらの抵抗を軽減させ滑りを良くする効果があるのだ。今、市場には様々なワックスが流通し、それらの効果を知ることが抵抗除去には重要なのである。

 

 

 

@水の吸い付きによる抵抗

スノーボードが滑り出す原理は滑走面が雪の上を滑ることによる摩擦熱で雪の表面がわずかに溶け出し、硬い水の膜が潤滑の役目を果たすことによって摩擦を減らしているからである。しかし、必要以上の水が溶け出したとき水が吸い付き、抵抗となってしまう。しかしワックスには撥水性があるためこの水の吸い付きによる抵抗を軽減しているのだ。

滑走面にはストラクチャーと呼ばれる細かな溝があり、これが水の排出を助け抵抗を減らしているのだ。また、普通のワックスの撥水性は時間とともに弱くなっていくが、これはワックス分子の水にくっつきやすい部分が雪面のほうに並び変わるためで、ワックスが切れたわけではない。切れたと思いワックスを上塗りしてしまうとさらなる抵抗を生み出してしまうのだ。このような場合は、フッ素ワックスやシリコン添加剤などが撥水性が高く、暖かいゲレンデコンディションや湿った雪といった水による抵抗が多い条件などにはさらに威力を発揮するのである。

 

 

 

A乾燥摩擦抵抗

寒くなると雪は溶けにくく乾燥した雪になる。このとき雪と滑走面は密接しているのではなく、雪の粒子と滑走面のわずかな接触部において雪は溶け出し、潤滑のための水分が存在している。しかし、雪温の低下に伴いその割合は減少し、滑走面と溶けていない雪の粒子が直接接触してしまう機会が増えていく。このときの抵抗が乾燥摩擦抵抗である。

理論上、これらを軽減するためには雪と滑走面の間にそれらよりも軟らかいワックスがあれば良い。滑走面が移動する場合、ワックスが雪との接触を防ぎつつ弱い力で切れるため、抵抗も無く移動することができる。しかし、ワックスの無い場合、滑走面と雪のどちらか弱いほうがむしりとられるか、乗り越えなければ移動できない。そして抵抗も増え、雪が硬い場合は滑走面の劣化につながってしまうのだ。

この場合、ワックスが柔らかすぎると雪の粒子が刺さり抵抗となってしまう。雪の粒子は硬いほど、また尖っているほど刺さりやすいので、それに応じた硬めのワックスを用いたほうが抵抗の軽減になるのだ。雪の粒子は温度が低いほど硬くなり、降ったばかりの新雪ははっきりしているため刺さってしまう。このため低温、新雪用のワックスは硬いのである。

逆に、古い雪は溶けやすく、隣の雪とくっつき粒子が丸くなるので、軟らかいワックスのほうが有効なのである。

しかし、ワックスがどんなに頑張ったとしても、水よりは硬いので適度な水量で潤滑されているときが最も抵抗が少ないのだ。

 

・圧力とベースバーンの関係

一般的にワックスは軟らかいほど抵抗が少なく、撥水性も高くなる。しかし、圧力が大きい場合、軟らかいワックスでは支えきれず滑走面と雪の粒子が接触してしまい抵抗が大きくなるのだ。

この場合、硬いワックスを用いたほうが抵抗も少なく滑走面の荒れも防げる。スノーボードの場合、雪質に合ったワックスを使ったのにも関わらずエッジ付近が白くなり荒れている状態になることがある。このことをベースバーンと呼ぶのだが、この場合、エッジ付近に硬いワックスを用いることで防ぐことが可能だ。より強力なエッジングをするライダーはより硬いワックスを使用する必要性があるのだ。

 

 

 

B静電気による抵抗

滑走面に用いられている素材のほとんどがポリエチレンである。このポリエチレンは静電気を帯びやすく、また滑走中、雪との摩擦によって徐々に静電気が蓄積されていく。静電気を帯びたもの同士は互いに引き寄せる性質があり、滑走悪化につながってしまうのだ。その割合は、乾いた雪の場合、全抵抗の約40%、湿った雪の場合でも10%程度ある。

この対処法は電気をよく通すグラファイトワックスかフルオログラファイト、もしくは導電性のあるガリウムを含んだワックスが効果的である。また、グラファイトをポリエチレンのなかに練りこんだグラファイトソールというものもある。しかし、このソールに電気をあまり通さないワックスを塗ってしまっては何の意味も成さないので、導電性のあるワックスを塗るべきだ。

ここで静電気除去に効果的なワックスについて詳しく解説してみることにする。

・グラファイトワックス

フッ素が現在のように一般化する前に登場した黒いワックス。一般的なワックスのように撥水性は無いが静電気による抵抗要素の除去、ゴミや汚れの付着防止効果、そしてグラファイト粒子の滑る性質を利用し、グラファイトソールとの組み合わせで広く使われていた。しかし、現在ではフッ素ワックスの一般化、ワックス自体が黒いためギアが汚れてしまうという理由からグラファイトユーザーは減ってしまったのだ。

グラファイトワックスを使用する場合、グラファイト粒子を均一に分散させるためにワックスを暖め生塗りし、それを広げるように塗る。またこれらのワックスに撥水性を加えたいのであれば、グラファイトワックスを塗った上に、雪質に応じたフッ素ワックスをかけたり、フッ素入りのグラファイトワックスを使用することが良いだろう。

・フルオログラファイトワックス

フッ素とグラファイトを科学的に統合したワックスで、フッ素の撥水性とグラファイトワックスの静電気を除去する性質を併せ持ち、幅広い雪質に対応可能。

これも暖めて薄く生塗りしアイロンで広げて使用する。単独でも用いられるが、さらにフッ素を上塗りし使用されることもある。

・ガリウムワックス

ガリウムも金属なのでグラファイト同様静電気除去、そして撥水性、ポリエチレンとの相性が良いという性質がある。

 

 

 

C汚れによる抵抗

春先などの汚れた雪質で、滑走面が黒くなり滑らなくなっている場合、雪に含まれているゴミや汚れといったものが滑走面のワックスに刺さっているのだ。板が滑らないといってさらにワックスを上塗りしても、かえってそのワックスにゴミや汚れが刺さってしまい逆効果である。

このような場合、フッ素系のワックスを仕上げに塗ることが効果的だ。フッ素にはゴミや汚れを寄せ付けない性質があるため、雪に含まれるゴミや汚れが刺さるのを防いでくれる。その他にグラファイトには静電気を逃がす性質があるため、汚れを吸い付けることを防止してくれる。最近ではフッ素とグラファイトを科学的に統合したフルオログラファイト(fluorographait)ワックスというものも開発され、より効果的にゴミや汚れを除去してくれるのだ。

また当然のことながら、保管時にも滑走面は静電気を帯びるため、板にカバーをかけたりケースに入れることで静電気の発生を防ぐことができる。このこともゴミや汚れの吸い付きを軽減させるのには効果的なのだ。

 

 

参考URL http://www.galliumwax.co.jp/menu_sb.html